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メールマガジン「法円坂」No. 3



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    メールマガジン「法円坂」No. 3(2001/9)(国立大阪病院)
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お元気ですか? 国立大阪メルマガ編集部です。

海の向こうでは、多くの方が亡くなられ、大変なことになってます。
テレビで見ていると、消防隊やレスキューなど、すごく動きがいいと思います。

第3号を、メルマガ編集部からお送りします。

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         院 長 井 上 通 敏 で す
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「 社会のIT革命と医療のIT化 」

(1)医療を受ける側の情報化

 最近、ホームページを見て病院を訪れる患者が増えています。おばあちゃんの
症状を聞いた娘や孫がインターネットを操り「どこの病院のどの科のどの医師を
受診すればよいか」を調べるわけです。診察を受けた医師から検査や病名や治療
のことを聞くと、インターネットからさらなる情報を仕入れます。次に来院した
ときは専門医以上の知識を備えていることさえあって医師をびっくりさせます。
でも、悪い結果が出てから猛烈に勉強して苦情を持ってこられるより、事前に勉
強していただいたほうがよい。こういう患者はまだまだ例外ですが、これから進
んで行く情報化社会の医療の姿を象徴しています。

 情報化社会とは「これまで見えなかったことが見えるようになる」「比べられ
なかったことが比べられるようになる」「自分の判断で選択できるようになる」
といった社会だと感じます。社会の情報化は産業界にsupplyerの時代から
consumerの時代への変革を促しました。大和運輸のくろねこ宅急便が国営の郵便
小包みを駆逐したのは「必ず翌日に届ける」という消費者の側に立った小倉会長
の経営理念が心を捉えたからだと聞きました。

 医療においても、もはやパターナリズムの時代は終わったと感じます。病院は
情報公開を迫られ、医師は時間をかけて懇切丁寧に説明し、患者は自分の責任で
医療を選ぶ時代。医師にとっては大変な根気が必要だし、患者には、難しい医学
情報を理解し、判断する能力が求められます。こういう情報化社会の医療は、知
力に優れ、情報に強い人には満足できるでしょうが、インターネットに馴染めな
い人も多いし、みんながみんな情報に強いわけではありません。沢山の情報弱者
が取り残されることが心配です。こういう医療情報弱者を支援する社会システム
を考えないといけないかもしれません。この役割をホームドクターに期待できな
いでしょうか。信頼して相談できる「かかりつけ医」をどの家庭も持つことが情
報化時代の医療においてはいっそう大切です。また、COMLのようなNPOの存在も
貴重だと思います。

 次回は、"医療を提供する側の情報化"について。



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          ト ピ ッ ク ス
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「 アルコールと食道癌 」


夏の暑いときのビールは格別ですが、もしあなたがビール一杯のアルコールで顔
が赤くなるタイプなら食道癌の発生にご注意を。


 発ガンには、環境因子と体質的因子が関与しています。食道癌の発ガンにはア
ルコールとたばこの関与が示唆され、食道癌患者に大飲酒家やヘビースモーカー
が多いことは経験的によく知られてきました。しかし、すべての大飲酒家が発ガ
ンするのではないので当然発ガンに至る体質的因子が関与していることが推定さ
れます。

 食道癌の発ガンに関与する体質的因子として、アルコール代謝関連酵素の遺伝
的多型 が関与していることが明らかになってきました。

 アルコールを飲んでから顔が赤くなるフラッシング反応が引き起こされるのは、
アルコールから代謝されたアルデヒドによります。アルコールをアルデヒドに代
謝するアルデヒド脱水素酵素2(ALDH2)には、ALDH2*1/2*1の正常型と、ヘテロ
欠損者(ALDH2*1/2*2)とホモ欠損者(ALDH2*2/2*2)が存在し、アルコール飲酒
後の血中アルデヒド濃度がそれぞれ6倍、19倍となりフラッシング反応が引き起
こされます。

 ALDH2*1/2*2の人は、少量飲酒の場合健常人と比較して8.84倍の食道癌発ガン
リスクがあり、3合以上飲酒した場合114倍の発ガンリスクがあることが判明しま
した。アンケート調査によると、過去にフラッシング反応があったケースで
ALDH2がヘテロである確率は95%であり、以前もしくはお酒を飲み始めた頃にフ
ラッシングを経験した人はADLH2がヘテロタイプで、食道癌のハイリスクと考え
られます。さらに、かなりの量を飲まれてきた方は特にハイリスクだと考えられ
ます。当科で手術を行ってきた食道癌の患者さんの多く約80%近くはまさにこの
タイプの患者さんでした。


 それなら? 私は大丈夫だ、顔は赤くならなかった。と安心される方もおられ
るかと思いますが、安心するのはまだ早く、フラッシング反応のない体質でも発
ガンリスクとなるタイプがあります。それは、アルコール脱水素酵素(ADH2)の
活性の低いADH2*1/2*1のタイプの方です。このタイプではアルコールからアルデ
ヒドへの代謝が遅いので血中アルデヒド濃度の上昇が起こらずフラッシングが起
こりません。しかし、活性の高いADH2*2/2*2やADH2*1/2*2のタイプの人に比較し
て7.1倍の発ガンリスクが証明されました。また、ALDH2がヘテロでADH2活性の弱
い人は40倍の発ガンリスクがあることも判明しました。


 これらの結果は、国立久里浜病院の横山先生を班長として当院および国立がん
センター、市立川崎病院が参加している厚生労働省の班会議の結果から判明しま
した。いずれ最終結果を一流英文誌に発表できると予想しています。


 ともかく、フラッシングのあった方は要注意です。でも、どないしたらええね、
とお尋ねの方もおられると思います。幸い、ルゴール染色を用いた内視鏡検査で
早期の食道癌の発見が可能です。ご心配の方はぜひ内視鏡検査をお受け下さい。
食道癌の診断および外科手術は、専門的にある程度以上の症例数を取り扱ってい
る施設とそうでない施設との格差があることが証明されています。また、病院の
規模も影響を与える因子です。当科では十分の症例数と経験を有しています。ま
た、病院の規模も大きく手術や術後を支えるスタッフも豊かです。


安心してうまいビールを飲むために、気がかりな方は検査を受けましょう。

外科部長 辻仲利政



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       医 長 会 の 話 題 
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 8月の医長会はお休みです。

http://www.onh.go.jp/icho/



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      看 護 の こ こ ろ (看護部から)
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☆  9月 あれ?! こおろぎ? 鈴虫? 
☆  暑い夏が一段落、秋は足早にやってきそうですね。
☆  秋の音色を聴きながら、静かなひと時を味わいたいですね。
☆  今月は 手術室婦長 荒木 輝美さんからのメッセージです。


 みなさま こんにちわ。今回は荒木が担当いたします。


 手術室で、「清水の舞台から飛び降りたつもりで」とか「まな板の鯉の心境で
す」と話される患者さまがいらっしゃいます。

手術は、治療のひとつの手段ですが、身体にメスをいれるとなれば本当に舞台か
ら「エイ!ヤー!」と一大決心をして飛び降りる心境ですよね。


本当に手術を舞台に喩えることができるのではないかと考えることがあります。

勿論主役は患者さま。
舞台(手術)を成功に導くためにいろいろな舞台装置(医療器械)を準備して配
置します。男優は外科医、女優は看護婦、名脇役は麻酔医が務め、エキストラに
臨床工学技師、検査技師、放射線科技師、薬剤師そして観客にご家族の皆様。

主役の患者さまを中心に多くの人々がこの舞台を支え、奮闘し大成功に治めます。


手術を安全に安楽に受けていただくことは、私達の永遠のテーマです。
感染防止のための更衣や消毒、楽な姿勢での手術、手術のあとには痛みのない経
過、さらに疑問や処置に対する説明は安心して手術を受けていただくための基本
です。

痛みを我慢していただくことは遠い昔の話になりました。

どうぞ、我慢をなさらずどんどんおっしゃって下さい。


手術を受けられた方がお元気になられて退院されたというお話を聞くのが私達の
良薬となっています。

http://www.onh.go.jp/kango/kokoro.htm



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          研 修 医 日 記
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 国立大阪病院研修医2年目の白 隆光です。

 1年目の初任給の日、その金額を見て愕然としました。
手取りで15万ほど、時給に直すと400円にも満たないという状態でした。
僕は医師国家試験に1年浪人して、その間仕事に就いてたのですが、その半分ほ
どしかなかったのです。
でも勉強、勉強と自分に言い聞かせていました。

 ところが関西医大の研修医が心筋梗塞で死亡したという記事をみて、そうとば
かりも言ってられないと思いました。
というのも、その亡くなった研修医というのは関西医大の野球部で、良く知って
いたからです。
そんなに体が病弱だったとは思えない彼が死に至ったと思うと、不規則な食生活
で7kgも増えた自分の体のことが心配になってきました。

 でも2年目になってある程度、仕事の要領を覚え、少し余裕が出てきました。
この1年間、目の前の仕事をこなすのがやっとで全く成長してないと思っていた
自分も、新しい1年目の研修医を見ると少しは成長しているのかなと思います。
なかなかしんどいですが、できる限りたくさんの知識と技術を得ていきたいと思
います。

http://www.onh.go.jp/kensyu/nikki.html



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これからも、アメリカの動きを見守りたいと思います。
第4号をおたのしみに!

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