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メールマガジン「法円坂」No.7



お元気ですか? 国立大阪メルマガ編集部です。

年末年始は、ネットワークが不安定で大変ですね。

第7号を、メルマガ編集部からお送りします。

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    メールマガジン「法円坂」No.7 (2002/01)(国立大阪病院)
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         院 長 井 上 通 敏 で す
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 新年のご挨拶 「愛、思いやり、尊重」

 みなさま新年おめでとうございます。
 2002年、早くも21世紀2年目となりました。21世紀を迎えてトンネルから抜け
出せるかと期待していましたが、世の中、暗くなるばかりで先が見えません。子
孫たちの日本と地球の未来はどうなるのでしょうか。

 明るいニュースもありました。イチローが大リーグのMVPに輝いたことや野依
良治教授がノーベル化学賞を受賞されたことです。ウィーンフィルのニューイヤー
コンサートを指揮した小澤征爾も全世界に感動を伝えました。

 日本人の20分の1の所得の人が同じ品質の製品を作るなら、日本人の所得が半
減して彼等の所得が10倍に上がるまでエントロピーが増大するのがグローバル化
というものです。それを嫌うなら鎖国するか、日本人の能力を高めるしかない。
鎖国はできませんから、イチローのような人がどの領域、どの業界にも次々出て
くることしか対策はありません。日本人に力があることをイチローは証明し、勇
気付けてくれました。どうすれば潜在能力を発揮させられるか、これが小泉構造
改革の目的であってほしいと思います。

 この医師の手術を受けたい、あの病院で治療を受けたい、と世界中から患者が
押しかけてくるような日本の医療に構造改革しなければならない。規制と横並び
だらけで、どんな優れた医療を行おうと同じ報酬のいまの制度ではイチローのよ
うな医師や病院は決して育たない。ドクターフィやホスピタルフィを自由に設定
できるようにし、市場がよい医師やよい病院を育てるようにすべきです。医療で
は公平性が求められますが、ミニマムリクァイアメントに切りかえるべきです。
国内だけの公平はグローバル化の世界では通用しない。

 自由と競争によって生まれた勝者を称え、富を築く。これはアメリカが目指し
てきた国造りであり、世界中をアメリカ流社会に変えようというのがグローバル
化です。日本がアメリカの豊かさを追い、再び経済大国を目指す限り、構造改革
を避けて通れないと思います。

 しかし、人類の可能性と豊かさを追求しつづけるアメリカ流が光だけではなく
て大きな影を伴うことを如実に示したのが同時多発テロに象徴される21世紀の新
しい戦争でした。自由と競争は人類の発展と豊かな国造りに必要なことではあり
ますが、その結果、勝者と敗者の間に蓄積された格差という巨大エネルギーが人
間の英知を超えて火山のように爆発することを神は人に教えたように思います。

 知的強者と武力が勝利するだけの社会では駄目で、才能や自然条件に恵まれな
かった人や国との格差エネルギーを吸収する何かが必要です。それは愛であり、
思い遣りであり、尊重でしょうか。

 病院は健康弱者を守る場所、健康強者が知力・技術と愛の力を発揮して築くミ
ニチュア社会です。21世紀の国際社会造りにヒントを与えてくれているように思
います。



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         副院長 廣島和夫です
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[最近思っていること:難病の治療について]

 規模の大きな病院では,最新の立派な検査器機・診断器機・手術器機などが完
備し,また,そこでは最先端の治療がおこなわれているという幻想(?)を皆さ
んはお持ちかと思います.確かに水準以上の整備がなされ,また私どもは水準以
上の治療をおこなっていると自負しておりますし,最先端を行く治療をおこなう
努力もしております.

 多くの患者さんは,自分の病気は,最新の治療法で完璧に治して欲しいと希望
されます.それは当然です.難病といわれるような病気を持つ患者さんほど,そ
のような願いが強いのも理解できます.

 遺伝子診断・遺伝子治療,組織・臓器移植,再生医療など世間を賑わせるよう
な医療も少しは身近になってきました.よく勉強をされている患者さんはこの辺
の知識も身につけておられますので,このような最先端の治療も大規模病院では
実施されているのでは,と思われがちです.

 しかし,殆どの病気に対して現在おこなわれている治療は,何十年という歴史
の積み重ねによって生まれてきたもので,変わり映えのする治療はそう多くはあ
りません.さして新しくもない治療法で治療することも多いです.しかし,その
根底には新しい理論や新しい手法が入り込んでいます.見かけの診断法や治療法
に大きな変わり映えは無くとも,確実に医療はゆっくりと進歩しています.ただ,
患者さんが望まれるほど,臨床治療医学の進歩は速くはありません.これが辛い
点です.

 小児整形外科領域の難病に取り組んでおりますが,最先端の技術・知識・動物
実験における素晴らしい成果と,現実に毎日の治療の現場でおこなっている陳腐
な治療とのギャップの大きさに呆然としつつも,如何にそのギャップを埋めてゆ
くのか,如何に上方修正してゆくのかが臨床医の務めと考え,毎日の診療をおこ
なっています.


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       臨床研究部長 楠岡英雄です
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 毎年、初詣には3つの神社・仏閣を巡る。これは、私と妻のそれぞれの実家の
習いを引き継いだ結果である。今年も同じくしたが、例年になく参拝者の少ない
のに驚かされた。初日は天候のせいかと思ったが、2日続くと偶然とは思えなく
なった。不況が進み、初詣どころでないのかと思ったり、あるいは、構造改革も
ついに神頼みから自力遂行にまで進展したのかと考えたりした。生来が天の邪鬼
な私であるが、「神様」というか「天」を信じている。アメリカで「日本人の倫
理規範は何か」と聞かれ、「天網恢々疎にして漏らさず」を講釈し、妙に納得さ
れたこともある。「敬天愛人」も好きな言葉の一つである。しかし、「天」は
「神様」と違い、ただ頼むだけではダメで、「人事を尽く」さないと願いを叶え
てくれないようだ。このあたりは、規制緩和の精神と通じるものがあるように思
う。昨年から、医療改革とIT革命が合体し、電子カルテの普及やレセプトの電
算化など喧しいが、実際、どのようになるのか誰も判らないのが実状である。当
院では電子カルテについては関係者の努力で一歩先んじている。今年はさらに多
くの部署で使ってもらおうと、メーカーを含め、多数の方に去年からがんばって
もらっている。この「人事」が認められ、「天の声」がかかるよう、初詣で祈願
した。



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       診療部長 恵谷秀紀です
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「医療グローバリゼ−ション」

 昨年1年間の読んだ本でいちばん面白かった本があります。ニューヨーク・タ
イムス記者のトーマス・フリードマンが書いた“レクサスとオリーブの木”で日
本語訳が昨年出版されています。昨年春の横浜での日本内科学会総会の特別企画
講演で東海大学医学部長の黒川清先生が紹介されていました。講演内容自体も非
常に興味深かったので、帰りの新幹線に乗る前に書店で買い求めて読みはじめま
したが、面白くてその週末で一気に読んでしまいました(目から鱗!でした)。
その内容をかいつまんで述べますと、第2次世界大戦後、東西冷戦構造が世界を
支配するルールであったが、冷戦終結後は情報通信ネットワーク技術を基礎とし
た“グローバリゼ−ション”が世界を支配するルールとなった。レクサス(トヨ
タの高級車;米国での販売名)は国籍を超えた最新技術(グローバリゼ−ション)
の象徴として、またオリーブの木は古来の伝統的価値(土地・文化・民族など)
の象徴としてタイトルにされている。健全なグローバル社会とは、絶えずレクサ
スとオリーブの木のバランスがとることができる社会である。以上が著者の主旨
でした。しかしながら、不幸にもこの健全なバランスがとれず、グローバリゼ−
ションに取り残された人々が富を一方的に奪われ、貧富の較差が以前にもまして
拡大することが現実としてあり、昨年9月のニューヨークの貿易センタービルの
テロ事件の背景の1つとなっているように思われます。

 医学・医療の領域でも、同様にグローバリゼ−ションの波が押し寄せてきてい
るのが現実です。医学領域では純粋にscience としての研究についてはグローバ
リゼ−ションは現実のものとなり最近の若い先生方は欧米の一流誌に研究論文が
掲載される事が日常の事となっています。しかしながら医療の領域では各国の文
化・民族などの社会的背景ならびに医療制度が各国で異なるため、グローバリゼ
−ション(医療倫理、IC、情報開示、DRG/PPS等)も一筋縄ではいかないのが現
状ではないでしょうか。上述の様に絶えずレクサスとオリーブの木のバランスが
とることができる様に医療グローバリゼ−ションと各国の文化・社会制度を踏ま
えたその国に最適な医療が進んでいく事がもとめられます。

 診療部長としてはglobal standardにたえうる人材の育成(卒後研修)ならび
に安全な医療の提供を行うことを目標とし、国立大阪病院のオリーブの木を育て
ながら、診療の下支えをおこなって行きたいと考えていますのでよろしく御願い
申し上げます。



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      トピックス   病診連携IT進捗中!
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国立大阪病院 楠岡英雄 ⇔ 城東区松岡診療所 松岡正巳(元城東区医師会長)


 楠岡です。

 最近、医療のIT化について色々の動きがあります。その一つに、昨年3月から
経済産業省の支援を受けて財団法人・医療情報システム開発センターが行ってい
る、先進的情報技術活用型医療機関等ネットワーク化推進(電子カルテを中心と
した地域医療情報化)事業というものがあります。これは、全国から公募した
28のプロジェクトに1件平均2億円の研究費を投じた、地域の医療連携を電子カル
テやインターネットを用いて推進するモデルの実証実験です。国立大阪病院は、
このプロジェクトの1つ「ネットワーク型電子カルテによる病院・診療所連携情
報システム」に参加しています。昨年末に本実証実験の一つの山場を越えました
ので、その内容を、やはりこのプロジェクトに加わっている大阪市城東区の松岡
診療所・松岡正己先生とともに報告します。

 この事業には2つの目的があります。第1は電子カルテのメンテナンスの容易さ
と経済性を目指した、ネットワークを介した診療所向け電子カルテの提供であり、
第2はセキュリティーを確保した病診連携用診療情報交換システムの構築です。
後者の診療情報の交換は、前者や既存の電子カルテと連携し、また病院側の情報
システムとも接続することで、正確、かつ、簡単に行えることが特徴です。

 この事業には、現在、大阪府下の約20の診療所と4つの病院(国立大阪病院、
大阪大学医学部附属病院、大阪市立大学医学部附属病院、城東中央病院)が参加
しています。これらの医療機関の間の病診連携を、セキュリティーの保証された
インターネットを通じて行おうとしています。診療所側では、患者さんの紹介状
(診療情報提供書)を電子カルテを用いて作成すると同時に、検査や画像などの
データを添付します。これを紹介先の病院に送付しますが、そのためにセキュリ
ティーを考慮したネットワークを構築し、このネットワークで中央のサーバーに
紹介状を送ります。紹介先の病院では、このネットワークを通じ、紹介状を取り
込むことになります。当院では、紹介情報を地域医療連絡室で受け取り、オフラ
インで病院情報システムに転送します。この部分がオフラインであるのは、当院
の病院情報システムのセキュリティーを守るためです。病院内では、病院情報シ
ステム内の「紹介状システム」を用いて、紹介状の内容、添付された画像データ
などを見ることができます。

 病院側から診療所に逆紹介する場合は、「紹介状システム」を用い、診療情報
提供書を作成し、必要に応じ画像などのデータを添付します。この紹介状は地域
医療連絡室で取り出し、上記の連携システムを使って相手先の診療所へ送り出し
ます。

 昨年12月中旬、このシステムの試験を行いました。当院総合内科に甲状腺腫の
精査のため松岡診療所から紹介された患者さんをモデルに使用させていただきま
した。この患者さんは、既に紙ベースで紹介がなされていましたが、本システム
により、紹介状とともに松岡診療所にて実施された血液検査データと、MRI画像
をデータとして受け取り、病院情報端末で確認できました。また、当院での血液
検査データを添付した返事を「紹介状システム」を用いて作成し、松岡先生に返
信しましたが、これも正しく受信されました。

 このシステム全体の本格的な試験運用を、1月中には始める予定です。2月に実
証実験が終了すれば、診療所・病院でこの病診連携システムに参加される所をさ
らに増やすことになると思われます。その時の参加のための条件の詳細はまだ決
まっておりませんが、概要が明らかになれば、またメールマガジンにてお知らせ
したいと思います。

国立大阪病院臨床研究部  楠岡英雄



 松岡です。

 楠岡先生が書かれておられるように、やっと電脳病診連携の情報インフラが完
成しました。運用のソフト面の充実がこれからの課題になります。

 参加の20の診療所では、すでに、医事会計を含む電子カルテが日常の診療に活
用されています。診療所の電子カルテのスタイルが異なっても、容易に電脳病診
連携が出来るところが今回の実証試験の特徴でもあります。

 実際の患者さんの電子紹介状と検査データーのやりとりをして、国立大阪病院
から届いた検査成績が私のパソコンから中央サーバーの電脳連携画面で見たとき
は感激しました。こうして病院からデーターや画像がサーバーに届くと、専用
ADSL回線(地域IP網)の接続を物理的に切断します(ルーターのジャックを抜く
だけ)。診療所の院内LANで該当患者の医療情報を私の電子カルテに取り込みま
す。素早く、確実に、正確にしかも簡単に出来ます。

 このシステムがうまく運用されるためには、どうしても病院の先生方のご理解
とご協力がなければなりません。また、このシステムが患者さんの利便性にどれ
だけ役立つか、重複検査の回避、医療費の削減、検査予約の容易さ、医療機関の
機能分化に伴う逆紹介の増加などなど、診療所の医師と病院の医師との共同作業
で検証して行かなくてはなりません。

 4月からはいよいよ本格的運用になりますが、ここに伏してご協力お願い申し
上げます。

大阪市城東区松岡診療所 松岡正己


* * * *
この電脳病診連携については、松岡先生のホームページの「電子カルテ記録」
No.68にも報告されています。
ご覧下さい。
68 Dynamicsでの病診連携の検査データの送付報告 (2001.12.27 up)
URL:http://www.shinryosyo.com/matuweb/



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      看 護 の こ こ ろ (看護部から)
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看護部長 小山洋子です

 今、医療現場ではクリニカルパスがチーム医療のツールとして評価され近々診
療点数で評価されるのではないかと云われ始めました。クリニカルパスは全国の
病院の30-40%で導入され、適用患者は5-10%と云われています。当病院では83種
類、全入院患者の45.6%(外科系53.0%)に適用されています。

 12月20日情報病歴委員会と看護ガイドライン委員会共催で院内シンポジウムを
開催しました。シンポジストの外科部長は早期経口食事(患者様の望むように)
は回復力を早め感染や合併症が少なく在院日数も短いとデータでもって説明され
ました。現代の医療の場で最も関心がある1つに感染があり科学が進めば進むほ
ど感染症との戦いがあります。

 ナイチンゲールは1860年代、140年も前に、当時のロンドンの環境は感染との
戦いであると「病院覚え書き」で述べ、また「看護覚え書き」で看護とは「自然
が最も働きかけやすいように働きかけることである」と諭されています。すなわ
ち自然の治癒力を高める働きかけをすることが看護の力であると教えられていま
す。自然治癒力を高めるのは「環境」「食事」「光」「水」「清潔」等自然の力
を取り込むメッセージです。看護はこのように自然の治癒力を意識した、根拠を
もった確固たる看護技術を提供できるかにかかっています。

 しかし、看護の妙味は「明示知」と「暗黙知」によって成り立つていると私は
考えています。「明示知」は理論で説明ができる行動、「暗黙知」は理論では説
明しがたい行動をいい、まさに各自のもつ体験や感性、理性等の人物像が影響し
ております。この両者もって中村雄二郎は「臨床の知」といいますが、ここに
"看護のこころ"があるように思います。"看護のこころ"を広くすること、高める
こと、深めることは自己を律することから生まれるのではないかと考えています。


http://www.onh.go.jp/kango/kokoro.htm



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       研 究 会 の ご 案 内
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第1回クリニカルパス研究会

日時:2002年1月26日(土) 13:00-17:00
場所:国立大阪病院 緊急災害医療棟3階講堂
   大阪市中央区法円坂2−1−14
   TEL:06-6942-1331


テーマ
 −パスの標準化と相互評価−

内科系要望演題 『糖尿病教育入院』
外科系要望演題 『胃切除術』
特別講演    『電子カルテとクリニカルパス』
          医療法人医誠会 城東中央病院 井川澄人先生

       近畿クリニカルパス研究会事務局
       国立大阪病院 外科 辻仲利政
       Tel:06-6942-1331
       Fax:06-6943-6467
       E-mail:toshi@onh.go.jp

主催:近畿クリニカルパス研究会



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医療も大変な時代に入りました。

頑張れば頑張った分だけ、みんなハッピーになれるといいですね!

また来月。それまでお元気で。

国立大阪メルマガ編集部

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