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メールマガジン「法円坂」No.15(2002/9/13)(国立大阪病院)



お元気ですか? 国立大阪メルマガ編集部です。

9月11日、テロがなくて何よりでしたね。

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    メールマガジン「法円坂」No.15(2002/9/13)(国立大阪病院)
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         院 長 井 上 通 敏 で す
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「医師の評価」

 日本の医療をリードすべき存在でなければ国立病院の存在理由はないと思うが、現
状の国立病院はいまひとつ元気がない。国家公務員という身分保証と国庫からの財政
支援はありがたいことだが、これに甘えて活力が落ちていることは否定できない。

 平成16年度からの独立行政法人化の狙いは活性化にあったはずだが、現在、国会に
上程されている法案では、全国の国立病院・療養所をひっくるめて一つの巨大法人と
し、職員の身分は国家公務員型ということになっている。これでは現状とほとんど変
わらず活性化・改革とはならない、と外部の有識者ばかりでなく多くの院長も思って
いる。

 改革というハードランディングではなく、おちこぼれを防ぐソフトランディングを
選択しなければならない内部事情はあるが、たんに国立病院・療養所の生き残りを考
えるのではなくて、日本の医療全体のことを考えるなら、この機会に国立病院・療養
所の独法化を医療改革の弾頭に置くくらいの考えで制度設計が行われてもよいと思う。

 私なら「情報公開」「病院評価」「医師評価」をキーワードとして国立病院・療養
所の改革を進めたい。

 「情報公開」と「病院評価」は医療改革に不可欠なことであるが、国立病院が先頭
に立つべきである。

 「医師評価」は能力給を取り入れることで、医師の身分を公務員でなく非公務員と
し、出来高に応じて給料を支払う。もちろん、診療上の稼ぎだけが評価対象ではなく
、研究や教育も重要な評価対象にしなくてはならないし、診療の質も厳正に評価され
なくてはならないが、有能な医師が集まり、無能な医師は淘汰されて、病院のレベル
が上がることは間違いないし、経営も好転するであろう。

 医療の世界も、国民・患者には公平性を担保しつつ、提供サイドにおいては適正な
競争原理を導入して淘汰を促進し、質を高める方向で考えるべき時代ではないかと思う。


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     放 射 線 科 部 長 御 供 政 紀 です
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放射線の「使い方」あれこれ
  −放射線なんか恐くない?−

<その1 特殊な使い方>

 ホームページを介して一般の方からちょいちょい問い合わせがある。検査への不安
や被曝影響の相談などである。
 2年ほど前、関東のAさんから「妻が腰椎と骨盤のX線検査を受け5〜6枚の写真を撮
った後で、妊娠していることが判明した。子供は欲しいが放射線の影響の心配である
。どうしたら良いだろう?」との相談メールがあった。
 いつも通り、放射線による確率的影響(被曝量の増加とともに発生頻度が上昇する
:ex.発がんと胎児の子孫への遺伝的影響)と非確率的影響(一定以上浴びなければ
障害が起こらない:ex.奇形と精神発達異常)について説明し、前者は一般的な診断
用放射線で生じる率が極めて低いこと、後者の障害を起こす閾値は50〜100mSvで、腰
椎と骨盤のX線検査での胎児被曝線量は多くても25mSv以下と推定されるので、少なく
とも診断用放射線被曝での胎児障害はないと考える、と回答した。
 赤ちゃんをどうしたかなと気にしていた矢先、Aさんからのメールである。ところ
が奥さんや赤ちゃんのことはコレッポッチも書いてない。内容はA酒店の宣伝ばかり
。それから毎月、吟醸酒、限定酒、ワインなどの情報が届いている。酒やワインは嫌
いではないから、読むだけは読んでいる。赤ちゃんは無事生まれたのかしらと聞いて
みたいが、いまさら厭味たらしいかなと遠慮している。
 「放射線」もこのように使えるかと感心しながら。

<その2 放射線科医は抗活性酸素で長生き?>

 「放射線ホルミシス効果」はトーマス ラッキーが1980年に提起した仮説で、低線
量放射線(200mSv以下)は生体にプラス面の刺激(ホルミシス)効果があるのではな
いか、というのである。
 従来、国際放射線防護委員会(ICRP)をはじめとして、放射線はどんなに少なくても
有害で、被曝線量と障害は線量がゼロになるまで比例する、という考え方が一般的で
あった。しかしこの考え方には我が国でも批判的な学者がいる。
 低線量放射線研究センターのラットやマウスを用いた実験では100mSvまでなら、生
活習慣病の原因とされる活性酸素を除去する酵素の機能が高まり、免疫力に関わるリ
ンパ球の一種の増殖能力が上昇した、という。ラドン温泉といわれる鳥取県三朝温泉
周辺住民のがん死亡率は他地域より低いとの、国立がんセンターの疫学調査もある(
朝日新聞2000.11.8)。
 わが意を得たりと、学生や看護師に、放射線科で働けば成人病を予防でき、長生き
できるかもしれないと宣伝することにした。因みに小生らの入局時は、放射線科医は
他科医師より平均5年短命だ、と言われたものである。職業上の被曝が一定以上の場
合、80円/日の被曝手当てが支給された時代である。
 機器も環境整備も進歩した現在では、放射線知識に乏しい無茶な使用を除けば、放
射線医療従事者といえども被曝量はゼロに等しいのだが、チビチビと放射線をいただ
くと癌や心筋梗塞、脳卒中から見放されるかも。そういえば恩師の名誉教授は若い時
から喘息持ちといいながら、94歳でお元気である。

<その3 真面目な真面目な放射線の使い方>

 「高線量放射線の効果」はがん治療においては常識的になっており、リニアックナ
イフやガンマナイフの普及もその現れであるが、イリジウム小線源による組織内高線
量率照射法は、子宮癌、前立腺癌、肛門/直腸癌、胆管癌、食道癌、頭頚部癌、乳癌
、皮膚癌など、根治的放射線治療の適応範囲を拡げている。
 正常組織への影響をでき得る限り避けて、病巣部に効果的な高線量率照射を行うこ
とは理に適った方法で、昔から理論として確立していたが、機器、機材の発展とコン
ピュータの発達が、難しい照射法を容易にしたといえる。
 基幹医療施設が取り組むべき政策医療の一環として「小線源照射によるがん治療」
が挙げられているが、25年間使用のコバルト腔内照射装置に替って本院でも来春には
デビューすることになり、10年来の夢が叶って心から喜んでいる。
 国立S病院でイリジウム線源1本を紛失するという事件が報道されたが、その轍を
踏まないよう管理体制を確立し、またradiation oncologistも増やしていただいて機
能的にも器質的にもQOLの高い癌治療に邁進したいと思っている今日この頃である


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     医 長 会 の 話 題 (01.0.2)
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7月・8月の医長会はお休みです。

バックナンバーはこちらでどうぞ。↓
http://www.onh.go.jp/icho/


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       看 護 の こ こ ろ (看護部から)
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 秋風が立ち、朝夕めっきり涼しくなりました…といいたいのですが、やはり、まだ
まだ暑い日が続いています。それでも、陽射しが褪せてきてすっきりした青空が広が
り、気持ちのよい季節を迎えつつあります。
 さて今回は、真夏のような性格(?)の救命救急センター 乗松千鶴看護師長です。

 先日、19歳の女の子が交通外傷で救急搬送されてから11日目で亡くなられました。
 お見送りの前、号泣されていたお父様から「入院直後に死んでもおかしくなかった
のに、先生と看護婦さんの適切な処置のおかげで、11日間生きさせてもらえました。
おかげで心の整理がつきました。」との言葉をいただきました。主治医と私は頂いた
言葉に対してただ頭を深くさげることしかできませんでした。

 総合救急部開設当時、私もスタッフもCPA(心肺停止)で搬送されてくる患者様に対
して、挿管、心マッサージ、血管確保を行ない、可能な限りその原因を検索し、蘇生
する医療に対して、一抹の疑問を感じていました。しかし、挿管され、人工呼吸器を
装着され、ラインが何本も入った状態で、たとえ短時間しか生命を維持できない状態
であっても、蘇生した患者様に家族が会っていただける時間があることが、数々の症
例を経験する中で、とても大切なことである、と思い始めました。

 自分にとって大切な存在の人が、ある日突然予後不良の病気であると宣告された時
、人はできる限りの事をその大切な人に対してしてあげたいと思うことでしょう。そ
して、その人が亡くなった後に、“本当にこれでよかったのだろうか”と少なからず
、自分を責めてしまいます。だからこそターミナル期の家族看護においては、患者様
が亡くなられた後に家族が後悔を残さないよう、死を受容することに看護の力を注ぐ
と私は理解しています。

 さまざまな救急の初療の場面では、医療の力の及ばない症例があり、悔しく思う場
面も多く、また、蘇生してもほんの短時間しか生命を維持できない症例もあります。
しかし残される家族の気持ちを考えた時に、まず、蘇生することが医師と看護師の役
割であり、そして家族が患者様の「死」を受容できるための時間の必要性を考えると
、その後の生命維持へのかかわりがとても意味のある事だと思います。

 今、私は救命救急3年目、救急車の音とともに、さまざまな受傷機転の患者様が搬
送されてきます。その背景には患者様と家族、関わる人々いたみ、嘆き、悲しみ、つ
らさがあります。その時々で私にもさまざまな感情が涌いてきます。慣れては行けな
いと自分に言い聞かせて、感じるこころを大切にしていきたいと思います。そして、
一人でも多くの人が回復していかれることを目標に看護していきたいと思います。

http://www.onh.go.jp/kango/kokoro.htm


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       コ メ デ ィ カ ル か ら
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 薬剤部 桑原健です。

 私は当院で、HIV感染者の方々への薬剤情報の提供や服薬指導、薬物血中濃度を担
当しています。これまで約300人の患者さんとお話をしてきました。私たちの仕事の
中から、わかったことをまとめて、今年7月7〜12日にスペインのバルセロナで開催さ
れた国際エイズ会議でポスター発表しました。

 国際エイズ会議は2年に一度開催される、エイズ関連では最も大きな国際会議です
。今回のテーマは「知識と公約から行動へ」。約1万5千人の参加者は、政府機関や医
療関係者に加え、感染者を支援するNGOやHIVに感染している感染者の方が、多く参加
しているのが特徴です。

 会議の最大のテーマは、増え続ける感染者に対する援助でした。昨年1年間のエイ
ズによる死亡者数は約300万人で、感染者数は約4000万人。その4分の3は南部アフリ
カに集中するものの、中国・インド・旧ソ連諸国では急増傾向にあり、多くは発展途
上国です。国連はエイズ対策に予防も含め年間最低100億ドルが必要と試算していま
すが、今年発足した世界エイズ基金には4月現在、約20億ドルしか集まっておらず、
会議に出席したネルソン・マンデラ氏やビル・クリントン氏も、援助を呼びかけてい
ました。

 さて、私の発表内容は、メシル酸ネルフィナビルという抗HIV薬の血中濃度を測定
した結果を、治療効果や副作用と比較したものです。この薬を代謝分解する肝臓の酵
素は、外国人に比べ日本人には少ないことが知られています。この人種差や代謝酵素
の強さの違いを発表したとところ、ジョンス・ホプキンス大学(http://www.hopkins
-aids.edu/publications/report/sept02_3.html)
など各国の研究者に注目され、海外のホームページで紹介されました。当院のHIV医
療チームで集めたデータが評価され、大変うれしく思っています。

 今後は、日本人特有の個人差について、代謝酵素の遺伝子と薬物血中濃度を比較し
ていきたいと考えています。お薬を飲む前に遺伝子を調べておけば、その人その人に
合ったお薬の量が、あらかじめわかるようになるかもしれませんね。

国立大阪病院 近畿HIV/AIDSセンターのホームページ
http://www.onh.go.jp/khac/


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          研 修 医 日 記
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こんにちは、整形外科2年目研修医の有光 小百合と申します。

この病院で研修を始めてから、早いものであっという間に1年余りが経とうとしてい
ます。
始めの1年間は整形外科で、現在は麻酔科で研修しています。

整形外科で女医というと「足持ち(手術開始前に患者様の下肢を挙上して消毒をしま
す。)とか大変じゃないの?」とか「男の先生ばっかりで居心地悪くない?」などの
質問をよくされます。

体力に関しては大学の時クラブをしていたし自信はあったのですが、いざ手術室で関
節が拘縮し可動域が異常に悪い方の足を持つと、さすがに腕がぷるぷると震えます。
おまけに周りの先生から「こら!何じゃその持ち方は?」など檄が飛び、その度に「
す、すみません。」と言いながら「がんばれ、私。」を心で唱え、「下ろしてよし。
」と言われたときには半ば吊りかけていた自分の上腕二頭筋をさすっているような状
態でした。
これではいけないと、1年上の女医さん始め先生方にアドバイスを受け、力が無いな
りにも楽に持つ方法を徐々に開拓していきました。

恐ろしいもので、半年が経過する頃になるとコツを覚え持てるようになり、手術室の
看護師さん達とも仲良くなり「先生、がんばれ。」と自分以外の方から励ましを頂く
ようにもなりました。「男の先生…」に関しては特に違和感を感じたことはありません。
だって、職場にはたくさん同い年位の看護師さんがいて一緒に楽しく仕事が出来てい
るのですから。

1年経って思うことは、自分はいつも周囲の人に助けられて仕事が出来ているんだと
いうことです。
仕事における最終目標もさることながら、そのプロセスを楽しめる環境にいる自分を
幸せに思う今日この頃です。

http://www.onh.go.jp/kensyu/nikki.html

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朝晩、めっきり涼しくなりました。
 でも、日中はまだ暑い!

夏の疲れがでませんように、健康にいっそう注意いたしましょう。

ではまた、来月!!

新サーバでの運用です。新サーバでは、バックナンバーも見ていただけます。
http://m-maga.onh.go.jp/

                      国立大阪メルマガ編集部

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