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メールマガジン「法円坂」No.21(2003/03/15)(国立大阪病院)



3月半ば、ようやく暖かくなってきたようです。

こんにちは。 国立大阪メルマガ編集部です。

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    メールマガジン「法円坂」No.21 (2003/3/15)(国立大阪病院)
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         院 長 井 上 通 敏 で す
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「医療は人」

 一昨年7月からメルマガを発行することになって21号を迎えました。院長が毎号に
登場するつもりはなかったのですが、院内外で次々と変化が起るものですから、つい
つい院長の立場での所感を記したくなりました。長い間、駄文にお付き合いいただき
ありがとうございました。今月でめでたく退官ですので、メルマガへの登場も最後です。

 メルマガやホームページが効いたのでしょうか、最近は、いろんな職種の医療人た
ちに大阪病院のほうを振り返っていただけるようになりました。週末になると、緊急
災害医療棟の講堂や研修室に沢山の人が集まり講演会や研究会で賑わいます。曜日は
E-mailで連絡しながら休日はオフミーティング。熱心さに感心しています。明るくて
元気なすばらしい医療人が次々育って行く雰囲気を感じます。

 研修医たちがどのように育つかが明日の日本の医療を左右するわけですが、16年度
からの初期研修必修化を機に充実した研修が行えるように、大阪病院のスタッフと研
修医が力をあわせて取り組んでくれています。

 これまで看護学校のことをメルマガで紹介する機会がありませんでした。大阪病院
の付属看護学校の志望者は年々増えており、10倍を越す競争率です。入学式、戴帽式
、卒業式でのきりりと引き締まった学生たちの姿に接すると本当に頼もしく尊く感じ
られ、毎回、感激していました。

 医療は建物や設備でなくて人だと感じ続けた7年間でした。大阪病院の素晴らしい
職員の皆様と暖かくご支援いただいた地域の皆様に厚くお礼申し上げます。


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        整形外科部長 大園健二です
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 私は整形外科の中でも股関節の手術を専門にしています。そして多くの患者さん方
が当院で手術を受けてこられた訳ですが、手術後は数人の方がグループになって歩行
訓練をします。進歩の早い人もいれば遅れがちな人もいます。
 そのけなげな姿から「かるがも会」という愛称の股関節患者さんの友の会が、数年
前に発足し会員の数も増加しています。
 主治医である私たちもその会合に積極的に参加して情報を提供していますが、そこ
での話題の中心はやはり人工関節の性能や耐用年数です。最近、同会の会報にのせた
私の文章の抜粋を許可を得て転載します。

「かるがも会 寄稿:人工股関節は何年もつの?」

 昔から現在まで、最も多く、そしていつも変わらず受ける質問は、「人工関節は何
年もつのか?」です。昔、こういうことがありました。他の病院で10年前に人工股関
節置換術を受けられた60歳のご婦人が国立大阪病院を受診されて「手術後の経過を調
べてほしい」といわれるのでレントゲンを撮っていただきました。しっかり歩いてお
られるし、レントゲンにも異常がありません。よくよく話を聞いてみると、昔、手術
の前に当時の主治医から「10年もつ」と言われ「今年がその運命の10年目なのです」
といって「再度の入れ替え手術を行う!」という私の判決を伏し目がちに待っておら
れる様子。「大丈夫ですよ。まだまだ当分このまま再手術せずにいけますよ!上手な
手術をしてもらってよかったじゃないですか!」といっても、ご婦人は俄には理解で
きない様子。やっと事態が分かったときには初対面の青ざめてこわばったお顔から、
にこにこ顔に変わられたことが印象的でした。「10年もつ」と言われてから毎年指折
り「残された年数」を数えておられたのでしょう。

 では、そもそも「人工関節が何年もつの?」というのはどういう意味なのでしょう
か?多くの方々は最初は「機械のようなものが耐用年数が何年あるのか?」たとえば
家電製品のテレビや冷蔵庫や洗濯機が5年から10年間壊れずに機能してくれそうだ。
これが機械の耐用年数ですし、なかば保証されているところですが、こと人工関節に
関しては、この感覚が当てはまりません。痛くなくて元気に生活できてレントゲン検
査で人工関節がゆるんでいない状態で、どれだけ長い期間、機能し続けたか、という
ことなのです。もちろん手術そのものの出来映え、使用する人工関節が良質のもので
あることはもちろんですが自分の骨にあっているかというようなことも大事です。

 そこで私たちは過去の統計データをもとにして「一般論として、手術してから10年
もつ確率は95%以上、15年もつ確率は90%、20年もつ確率は80%で、あなたは最高記
録を目指してくださいね!」というようにしています。
 100人手術したら10年たったときに95人以上元気だし、15年たっても90人以上は元
気に活躍しているということなのです。だから患者さんが70-80歳なら「一生もちま
すよ」と言うこともあります。だって寿命のほうが早くくる可能性が高いからです。
仮に10年もつ、15年もつと医者から言われても、それは10年や15年で100人が全員入
れ替え手術になるという意味ではないし、入れ替え手術が必要になるのは現実にはは
るかに低い確率だということを認識する必要があります。でも兎に角、今は技術が進
んできましたので手術後から「何年もつか?」ということだけに神経質にはなりすぎ
ずに(高い確率で当分の間もつのですから)「同年代の人と同じ程度に」有意義な日
常生活を送り、趣味に走り、デパートのバーゲン戦線にも参戦、国内のみならず海外
旅行などにも参加されるのが一番ではないでしょうか。神の決めた寿命を楽しく快適
に過ごすために。

 人工股関節の導入初期には、うまくいけば15年くらいもつと言われていたので、入
れ替え手術を恐れて、「とにかく60歳まで待って手術したら平均寿命を考えれば1回
だけ入れ替え手術をすれば済む」と説明されることが多かったようです。しかし15年
もつ確率が90〜95%以上とすると、この考えは今日では正しくありません。仮に40歳
で両側の股関節が激しく痛くて外出もできない「深窓のご婦人」はどうしたらいいの
でしょう?
 60歳までじっとしていたのでは人生手遅れです。まだまだ華も実もある40代、50代
をどうしてくれる! そんなに苦しい状況にあれば「60歳まで待ちなさい」という言
葉は冷酷に聞こえます。手術をするべきか、そしてするべきならどんな種類の手術を
するべきかを決めるのは、年齢だけではありません。同じ年齢でも骨の年齢は若い人
もあれば老化が進んでいる人もいます。股関節の変形の進行具合も年齢と同じとは限
りません。若くして末期の変形になっている場合もあれば、年齢の高い割に骨は丈夫
で変形は軽いかもしれない。こうした個々の状況に即して手術適応を決めないと、一
人一人の患者さんは不幸になります。「60歳」という特定の数字も、「10年もつ」、
「15年もつ」といった言葉と同様に我々の頭からいったん取り除く必要があるように
感じます。


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     医 長 会 の 話 題 (03.2.26)
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 2月26日の医長会の場で、高線量率組織内照射について最近の知見を報告させてい
ただきました。組織内照射は、直接患部の中に放射性の小線源を挿入する治療です。
正常組織の被曝を避けながら、効率よく腫瘍に照射することができます。そして、短
期間に治療が完了できるという長所もあります。しかし、従来の低線量率組織内照射
には医療者の被曝という大きな問題があり、その発展に停滞をきたしていました。

続きはこちらで・・・。↓
http://www.onh.go.jp/icho/


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       看 護 の こ こ ろ (看護部から)
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産科病棟師長 渡邊 玲子です。

大阪城に咲き誇っていた梅の花が、薄ピンクの桜の花へとバトンタッチの準備を始め
ました。大阪病院でも、新採用の看護職員を迎える準備を始める頃になりました。

さて、大阪病院では患者様の人権の尊重を大きく掲げています。
「人権を尊重する」。
言葉で言うのは簡単ですが、それを実行するのは生やさしいものではありません。私
の病棟でも新しく助産師を迎えるにあたって、それをどう学びとってもらうかは大き
な課題であり、悩むところです。

21世紀初頭にはヒトゲノム計画が終了すると言われています。羊水検査による胎児
異常の発見、遺伝子操作による異常をもたらす遺伝子の排除、多胎妊娠での減数手術
など、現実に命の選択が行われています。そのような中で人間の生命・人権をどうと
らえるかは、私自身、正直答が出せないでいます。


今まで私が関わった患者様でこんな方がいらっしゃいました。

その方は胎児が双胎で、早産予防で入院している高年初産婦の方でした。結婚して長
い間子どもができず、人工授精を重ねやっと妊娠したものの胎児は品胎(三つ子)。
生まれてくる子どものリスクを考え減数手術を受けられていたのです。その方が入院
されてきたときは18週くらいでしたが、子宮の収縮がかなりひどくいつ生まれても
おかしくない状況でした。入院してすぐにバルンカテーテルを留置し、ベッド上から
動くことを全く許されないような厳しい状況。だけど、長期に渡る入院生活でその方
から「つらい」とか、「安静にするのがいやだ」というような言葉を一度も聞いたこ
とはありませんでした。

あるとき患者様と話す中で、次のようなことを話されました。
「入院して絶対安静でいるけど、子どものためだと思うと耐えられる。死んでしまっ
た子どものためにも、残った二人にはどんなことをしても無事に生まれてもらいたい。」
これに対して私は、胸がつまってうなずくことしかできませんでした。本当にほしく
て、ほしくて望んだ子どもの減数手術を受けざるを得なかった悲しさ、辛さを思うと
かける言葉もなかったのです。

ヒトゲノム計画が進み、人の遺伝子情報の解析が進む中、今後もっと考えさせられる
深刻な状況がでてくるでしょう。何が正しくて、何が正しくないのか、一言で言い切
れないことも多々あるでしょう。ただ、その渦中にいる患者様の悩みや葛藤は、看護
者よりも大きいことは確かです。そのことをしっかりと分かった上で、生命倫理と人
権について真っ正面から向き合うことのできる看護者であること。それがひいては患
者様の人権を尊重することに繋がると思いますし、そうあってほしいと願っています。

http://www.onh.go.jp/kango/kokoro.htm


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          研 修 医 日 記
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 皆さま、初めまして、眼科研修医2年目の伊藤重雄です。
 国立大阪病院での研修もあと2ヶ月半となってしまいました。眼科はローテーショ
ンがないために眼科一本での研修となりますが、網膜、緑内障、角膜、眼形成のスペ
シャリストであるスタッフの先生方から内容の濃い、温かな御指導を受け、そして患
者さんとの対話を通じてますます眼科の魅力にとりつかれている毎日です。

 眼科の魅力としてはまず、白内障のように治療効果が目に見えてわかることが多い
ことです。私が手術させていただいた患者様で術前視力が両眼0.05だった方が両眼1.
0に回復した方がいらっしゃいました。術前は物静かなおとなしい方だなあと思って
いたのですが手術後、外来に来られたときには全くの別人のように明るい笑顔で、手
術前に見えなくて面白くなかった北海道旅行にもう一度行ってきたお話を聞かせて頂
きました。こういう時はやはり眼科医になって良かったと思える時です。
 もちろんこのような方ばかりではありません。視力予後の悪い疾患の方もたくさん
いらっしゃいます。しかし、視力予後の良し悪しに関わらず、自分の想像以上に「見
える」ということが人間にとって大きいと痛感しました。全身状態がとても悪い患者
さんが子供の顔がもう一度見たいと車椅子で必死に外来に来られた方もいらっしゃい
ました。
人間に入ってくる情報の9割は目で見たものからだともいわれています。その大事な
「見える」という情報を可能な限り追求し、学んでいきたいと思います。


 私生活は仕事に追われてなかなか自由な時間がないのが現実で、やはり院内の寮に
入って良かったと思いました。病院だけでなく、心斎橋、難波、梅田にすぐ出られる
のでおいしい店をたくさん覚えることもできました。最初は病室だった部屋を改造し
て作ったこの寮の狭さに戸惑い、隣人である某研修医の先生のシャワー中のカラオケ
練習に睡眠を奪われることもありましたが、今ではよい子守唄になっています。ひと
つお願いをするならお湯が24時間出るようにして欲しいという事です。朝シャンなん
て夢のまた夢。前夜にシャワーを浴び損ねると修行僧の様に翌朝は冷水をかぶってい
ます。おかげで今年もインフルエンザにかかりませんでしたが…。

 あっという間に終わりを迎えそうな国立大阪病院眼科での研修は自分の眼科医とし
てのキャリアのスタートとして最高の場であることは間違いありません。本当に御指
導いただいている斉藤喜博部長をはじめ、眼科の先生方には感謝この上ない気持ちで
一杯です。あと2ヵ月半です。まだ2ヵ月半あります。何事にも興味を持って吸収して
いきます。朝、冷水をかぶりながら…。

http://www.onh.go.jp/kensyu/nikki.html


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暖かくなったとはいえ、朝晩はまだまだ寒いです。
皆さんも風邪などひかないように、気をつけてください。

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                      国立大阪メルマガ編集部

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