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メールマガジン「法円坂」No.29(2003/11/14)(国立病院 大阪医療センター)



大阪も、紅葉のシーズンになりましたね。

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 メールマガジン「法円坂」No.29 (2003/11/14)(国立病院 大阪医療センター)
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今月号の目次
 ・院長 廣島 和夫 です
 ・放射線科部長 細木 拓野 です        
 ・バンクーバーでのHIV研修に参加して
 ・医 長 会 の 話 題
 ・看 護 の こ こ ろ (看護部から)
 ・研 修 医 日 記

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         院長 廣島 和夫 です
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○ 経済不況と患者数の減少
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 東証1部上場株価日経平均が1万円台に復帰してから2ヶ月ばかりが経過しようと
しています。少しは日本経済もどん底から立ち直りつつあるのか、少しは希望が出て
きたか、そう思いたくなります。

 しかし、Medifax によりますと、社会保険診療報酬支払い基金のまとめた本年7月
の医療保険確定金額は、入院分については前年度比 13.9%減という大幅な減少であ
ったとのことです(本年4月以降、10%減の状態が続いてはいたそうですが---)。と
くに被保険者(保険本人)分が 18.3%減(被扶養者は 11.8%減)と突出しており、
3割負担の影響が被保険者に強く出ていると、コメントされています。また、入院外
診療では、被保険者 14.6%減ですが、被扶養者(家族など) +2.3%になっています。

 単純に考えますと、被保険者は病院に行かず自然に治るのを待つか、薬局で大衆薬
を購入し何とか自分で治そうとしている。しかし、女・子どもにはそんなことをさせ
ることは出来ないので、せめても外来を受診させ治そうとしている、ということなの
でしょうか?
 まだまだ不況の影響は根深い、と言うことでしょうか?
 
 それとも、この減少分の幾ばくかは、自宅安静や大衆薬対応でも治ってしまう程度
の状態であったのでしょうか?

 大阪府下の衛星都市の市立病院の先生の話です。常日頃は夜間救急部門に100人以
上の患者さんが訪れるのですが、日本シリーズの期間は受診患者が激減し、いつもの
2割以下であったと。

 考えさせられます。
 本当に医療を受けなければならない方々に受診抑制がかかっていることは事実でし
ょうが、その程度がどれほどなのでしょうか?
 上記のような一面のみを取り上げて、色々と類推することは非常に危険であると思
いますが、まだまだ医療費が有効に使われていないのでしょうか?

 軽医療(風邪・頭痛・腰背部痛皮膚疾患・怪我・打撲捻挫など)における自己負担
率の変化と医療機関受診率の変化・大衆薬依存について、「医療サービス需要の経済
分析」(井伊雅子・大日康史 著、日本経済新聞社)に書かれています。すなわち、
自己負担率が2割から3割負担になった際、風邪・頚部痛・腰背部痛・皮膚炎症などで
は、医療機関への受診率が低下する(大衆薬対応となる)が、軽度の外傷・胃の痛み
・花粉症・頭痛など幾つかの疾患群では、自己負担率の上昇に関係なく医療機関への
受診率は変化しない、と(平成11-12年度科学研究補助金基盤研究「医療保険制度改
革の可能性に関する医療経済分析(代表:瀬岡吉彦 関東学院大学教授)」)。

 上記は外来受診の軽医療患者の話ですが、入院を要する医療についてはどうなんで
しょうか? 入院患者中にも、軽医療患者が含まれているのでしょうか、それとも、
入院しなければならない病態の患者さんにも受診抑制が働いているのでしょうか?

 不況の影響で医療機関に行くことを差し控えたがために、治療の時期を失し病態を
こじらせてしまうことが、私ども医療を提供する側の大きな心配事です。
 以前のメルマガでも書きましたが、高齢者医療が高くつくとの表層的な見方から、
高齢者の受診にブレーキをかけてしまうと、治る病気も治らなくなり、余計に大変な
ことになりかねません。

 日本の医療環境は世界のトップレベルにあり、これには国民皆保険制度が大きく寄
与して来た、と考えられます。しかし、これも自己負担率如何によっては、とくに不
景気なときには、幻想になってしまうのでしょうか?

 経済不況による受診患者数減・入院患者数減の原因・要因の本当のところを、知り
たいものです。
 国民にとっても、国にとっても重要な点であろうかと思います。

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ちょっと感じたこと:定年制?
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選挙前、比例代表区の自民党立候補者に定年制を設けることで、いろいろと世間で議
論されていました。

 一般論として年齢のみで一律に決めつけるわけには行かない、と考えている方々が
大半であったかと思います。

 医師の世界、とくに外科系の医師のひとりとしては、何かの折りに、『手術は、も
うしんどいな』とか『外来診察が面倒に思うようになったな』という気持ちが少しで
も芽生えれば、そろそろ辞め時、かと思います。
 おそらく、どの世界でも同じでしょうが、自分が天職と信じていた仕事に従事する
ことに少しでも『しんどさ』を感ずれば、辞め時でしょう。

 一方、端から見ておれば『辞め時であるな』と感じるのに、本人が一向に自覚せず
---、という場合も少なくないのでは、と思われます。とくに、いわゆる定年年齢に
達していない時期であればあるほどです。

 他方、かなり年を召されていても非常にお元気で、頭の方もシャキシャキしておら
れる方も少なくありません。一律に年齢でもって機械的に線を引く事の問題を多くの
人が感じているのは、このためです。

 仕事の内容によっても異なります。肉体労働では、無理の効くのはせいぜい中年止
まりでしょうし、大所高所から全体を眺め判断すると云った職務に従事される方々で
は、かなり高齢でも、頭の方がお元気であれば大丈夫でしょう。

 生物学的に定年という概念はないのでは? 外部からの損傷に対する組織修復能力
などは、結構、超高年齢に達しても存在します。ヒトは120歳位まで生きることが出
来る、といわれていますが、これは定年ではなくヒトとしての限界です。
 
 手術前に、患者さんの年齢に関係なく、臨床的な勘で、表情・血色・動作・会話な
どによって元気度を憶測したりしますが、意外にも正確に当たります。感覚的に元気
度のよいと判断された患者さんは、一般に回復も早く順調に退院することが多いとの
印象を持っている外科医は少なくはないでしょう。
 まあ、このような質的なものがはっきりと掴めれば、定年制ではなく、元気度制に
すれば、と思うのは小生ひとりでしょうか?

 判断力や仕事の質に影響が及び始めれば、『そろそろお引き取りを』と天の声が誰
彼無く平等に云ってくれれば、一番ですが---。

 少なくとも若い人の居場所を空けずに居座ることだけは、避けねばなりません。
 他人事のように云っていますが、自分もその対象に入っているのです。 
 忘れていました。


     ★★★★★お知らせ★★★★★

 国立病院 大阪医療センターは、平成16年4月から、

                『敷地内禁煙』

 をおこなうことに決定しました。


 これから院内キャンペーンを繰り広げ、まず職員の喫煙者対応から取り組みます。
 さらに、患者さんにも喫煙の健康被害について、より理解を深めていただき、ご協
力願うようにいたします。


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          放射線科部長 細木 拓野 です
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 御供部長の退職により、平成15年10月1日付けで放射線科部長を拝命いたしました。

 平成7年1月1日に当院放射線科に赴任してから約8年になりますが、主に腹部画像診
断およびIVR、末梢血管IVRの仕事を担当してきました。この間、当初よりは医師と技
師の数が増えてはいるものの、機器の更新・新設、部分的PACSの導入などで、手技・
読影業務量が当初とくらべ格段に増えています。また治療部門でも、組織内照射が今
年度から導入されたこともあって、一人の治療医師では担いきれない業務量になって
います。来年の独立法人化を迎えて、ますます業務量が増えそうですが、患者様への
サービス向上、医療過誤を起こさないようなシステム作りに心を配ると同時に、多様
な診療内容を常にup-dateに保つよう努力していきたいと思っています。そのために
人員増員・陳旧化機器の更新を、是非お願い致したいと思っています。

 いろいろとご迷惑をおかけすることもあるかと思いますが、どうぞ宜しくお願いい
たします。


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       バンクーバーでのHIV研修に参加して 
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                                        看護部  下司有加

 今回2003年9月20日から29日までバンクーバーのセントポール病院にて、カナダに
おけるHIV診療の現状と在宅支援の実際について研修してきました。

 カナダにおけるHIVの医療システムは、医療機関、NGO、地域社会とのつながりが強
固で、かつ、行政をまきこんで取り組みをしています。そして、一番支援を必要とし
ている層にこまやかなプログラムが組まれていることに驚きました。患者は病気をか
かえながらも常に「地域で生活している人」であるため、いかにそこで健康を維持し
、生活していくかをベースに考える必要があると考えます。カナダのようなシステム
はそこで生活することを整備するシステムになっていました。

 また、バンクーバーではIDUやホームレスの問題が深刻な状況でした。HIV感染症が
そういった人々に蔓延し、さらに感染拡大しつづけているということは社会全体の問
題です。脆弱な層に感染するHIVは、単なるHIVという病気の問題だけではなく、公衆
衛生の問題としてとらえ、日本でも行政とともに取り組んでいかなければなりません
。そして、感染拡大を予防していくための政治的な戦略が必要ではないかと感じまし
た。医療機関がベースではなく、地域社会や行政との連携をはかれるようなシステム
作りが必要です。

 今回の研修に参加させていただいて学んだことを、現在行っているの支援の中で役
立てていけるよう今後も努力していきたいと思います。研修参加にあたって、ご協力
いただいた皆様に感謝いたします。


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         医 長 会 の 話 題 
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「院内感染対策について」
                 免疫感染症科 上平 朝子

感染予防には、患者さんに直接関わる医師や看護師などが中心となりますが、院内感
染対策では、患者さんの病院内での生活全てが関わってくるため、全職員の認識向上
が必要となります。そこで、当院の院内感染対策の活動を御紹介させて頂こうと思い
ます。


続きはこちらから・・・↓
http://www.onh.go.jp/icho/


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       看 護 の こ こ ろ (看護部から)
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                                   東10階病棟 木本 一二三

 11月に入り、朝夕めっきり冷え込むようになってきました。大阪でも木々が色づき
始めています。皆さまいかがお過ごしでしょうか?

 私は消化器内科病棟で勤務しています。当病棟では、悪性疾患の患者様が約5割を
占めています。吐下血などの急変や内視鏡治療や肝動脈塞栓術などの治療目的、病状
の進行により症状緩和を目的とした入院が多く、急性期〜終末期のあらゆる状態の患
者様の看護を行っています。当病棟のスタッフは、経験年数5年以下が7割を占めてい
ます。急性期と終末期の患者様を同時に看護していることで、関わるべき時に十分な
関わりができていないのではないか、経験が浅いために看護としては不十分ではない
かとジレンマを感じているスタッフもいます。そうしたジレンマを少しでも軽減する
ために日々の患者カンファレンスや医師や他職種との週一回の緩和ケアカンファレン
スを行っています。そこで私がスタッフに振り返ってもらいたいと考えているのは、
患者様や家族は何を考え、何を求めているのかを看護者として把握できているのかと
いうことです。
ミルトン・メイヤロフは『自分以外の人をケアするには、私はその人とその人の世界
をまるでその人になったように理解できなければならない。私は、その人の世界がそ
の人にとってどのようなものであるか、その人は自分自身に関してどのような見方を
しているのかをいわばその人の目でもって見てとることができなければならない』と
述べています。これは、看護者としてスタッフには大切にしてほしいことだと思って
います。

 若いスタッフは患者様や家族の思いをどのように聞けばいいのか悩んでいることも
多いようです。まず必要だと考えることは、患者様や家族にこの人になら話をしても
いいなと思ってもらうことだと考えています。そのためには、日頃から患者様や家族
の声を聴く姿勢が大切だということをスタッフに認識してもらいたいと思います。


http://www.onh.go.jp/kango/kokoro.htm


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          研 修 医 日 記
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こんにちは。2年目研修医の谷尻知栄子です。

早いもので研修医生活も、もう一年半が経とうとしています。
卒業後右も左もわからない中で始まったこの一年半を、私なりに振り返ってみたいと
思います。

 平成14年6月、内科系ローテーターとして最初に配属されたのは消化器科。
研修医4人のうち、3人は2年目の先輩研修医。先輩らが着々と仕事をこなす中、不安
と焦りでいっぱいでしたが、先輩らに励まされ、支えられながらなんとか過ごしまし
た。 末期肝癌患者さんの最期をご家族と一緒に迎えた初の死亡宣告は涙をこぼさぬ
よう、必死の思いで感情を押し殺しての宣告でした。死と闘うこと、そして生きるこ
とと闘うことを真正面から感じた半年間でした。

 次にローテートしたのは放射線科。
一枚の画像の中にある貴重な情報をひとつでも 見逃すまいと目を凝らす日々。診断
を下す重要性とその責任の大きさを知りました。 わずかな情報を手がかりに患者さ
んの病態を読み取り、画像を通して診断する放射線科医の先生方の背中をみながら、
畏敬の念をいだいた3ヵ月でした。

 そして次の3ヵ月は救命救急センターでの研修でした。
食事中であれ、入浴中であれ、昼夜を問わず起こる事件・事故・病気。有無を言う間
もなく連絡があり、閉じそうな眼をこすりながら救急外来へ走り寄る日々。一刻を争
う判断と処置を、目にもあまるスピードでやってのける、その激しさと速さにたじの
く毎日でした。救命で過ごしたこの3ヶ月間は、大変であった反面、私にとってたく
さんの知識・経験・技術を学びとれた密度の濃い3ヵ月間でした。

 平成15年6月、2年目の研修医生活は循環器科から始まりました。
握りこぶしほどのこの小さな心臓という臓器は、私が想像していた以上にスケールが
大きく、そして壊れやすい、恐ろしく繊細な臓器でした。うなぎ上りに良くなるかと
思えば、どこまででも落ち込んでしまう、その急激な変化を何度も目の当たりにしま
した。循環器内科医、そして心臓外科医がチーム一丸となってひとりの患者さんを助
けたとき、そしてその患者さんからありがとうと言われたとき、“医者になってよか
った”と心から思いました。
 
 この一年半を振り返ると、本当にたくさんの人との出会いがありました。医療の枠
を超え、人間としても色々なことを学んだ気がします。私が医者になろうと思ったの
は忘れもしない、高校2年生の時の阪神大震災がきっかけでした。初めて自分自身が
死の恐怖を味わったことを今でもはっきりと覚えています。

これからも病気とそして患者さんやそのご家族と向い合う中で、今の気持ちを大切に
成長していけたら、と思います。


http://www.onh.go.jp/kensyu/nikki.html


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総編集長:病院長 廣島和夫
編 集 長:副院長 楠岡英雄、看護部長 近藤りつこ 
編  集:大江洋介 横田尚子
発  行:国立病院 大阪医療センター院長室
    (〒540-0006 大阪市中央区法円坂2-1-14)
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(以下のURLからお入り下さい)
http://m-maga.onh.go.jp/


風邪には十分気をつけましょう。
インフルエンザのワクチンは、受けられましたか?

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