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メールマガジン「法円坂」No.131(2012/4/16)(独立行政法人 国立病院機構 大阪医療センター)



 今年の3月は例年より寒くて、桜の開花が遅れていましたが、大阪は先週後
半に満開になりました。
今年度初めてのメルマガをお届けします。
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   メールマガジン「法円坂」No.131(2012/4/16)
          (独立行政法人 国立病院機構 大阪医療センター)
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今月号の目次
 ・院 長 楠岡 英雄 です
 ・副院長就任のご挨拶
 ・地下鉄内での人命救助経験:ICLS役に立ちました。
 ・診療科紹介 外科 4
 ・看 護 の こ こ ろ
  ・研 修 医 日 記
 
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         院 長 楠岡 英雄 で す 
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 「臨床研究・治験活性化5か年計画2012」が3月30日に、厚生労働省医政局、
文部科学省高等教育局・研究振興局から通知されました。

  わが国における治験・臨床研究を推進するために、平成19年3月に「新たな
治験活性化5カ年計画」が策定され、その後、この5ヶ年計画に従って種々の
取組みが進められてきました。また、5ヶ年の中間年である平成21年度に中間
見直しが行われ、修正も加えられました。しかし、「新たな治験活性化5カ年
計画」は平成23年度末で終了するので、昨年8月に「臨床研究・治験活性化に
関する検討会」が設置され、7回にわたる検討会の末、まとめられたのが「臨
床研究・治験活性化5か年計画2012」です。

 治験・臨床研究の活性化に関する取り組みは、平成15 年4 月に策定された
「全国治験活性化3カ年計画」から数えてこれが3つ目になりますが、従来の
計画と大きく異なる点はその題名が示すとおり、治験から臨床研究に重点が移
ったことです。また、治験においても、後期・検証的な治験から早期・探索的
な治験に重点が移っています。もちろん、後期・検証的治験をおろそかにして
良いわけはありませんが、今後、わが国の創薬力を伸ばすためには、早期・探
索的な治験、POC(Proof of Concept)試験に重点を置くことが強く認識され
た結果といえます。まさに、医療イノベーションの方向に焦点があてられてい
るわけです。

 また、臨床研究の活性化に重点が置かれたことには大きな意味があると思っ
ています。私もこの検討会に参加しましたが、その最後の会で座長の矢崎義雄
先生から構成員全員に一言ずつ述べる機会が与えられました。その時の発言の
要約を以下に引用させていただきます。

 「私は治験に関わることを10年以上行ってきました。いままでの検討は、ド
ラッグ・ラグやデバイス・ラグの問題の早急な解決等に関連して、治験にかな
り重点がありました。今回「臨床研究・治験」と臨床研究の方が前へ出てきた
ことは非常に画期的なことで、これで日本の臨床研究の形態がグローバルスタ
ンダードに近づいたと思います。欧米においては、臨床研究があって、その上
に治験が乗っかっている形だったのが、わが国ではまずは治験をなんとかしな
ければいけないということで始まったので、どうしてもグローバルな形とはや
や異なっていました。したがって、今回は大きな転換点になると思ってます。
また、この5か年計画の実施面に関しては、さまざまなバリアを取り除き、臨
床研究を進めようという非常に強い意思が感じられますし、今後その方向にい
ろいろなことが進んでいくと思います。
次の問題は、臨床研究を始める元となる問題を臨床の現場で捉えるというマイ
ンドの育成です。そういう意味では、研究をする人材の育成というよりも、医
療の現場で働いている人が問題点を見つけ、それを研究側へ投げるようなマイ
ンドを持った人材の育成が大事です。Physician Scientist、Clinician 
Scientistと呼ばれるこのような人材が自然に育つような環境が海外にはある
わけですが、それをいかに日本で作っていくかがこれからの大きな問題です。
臨床研究・治験が進んでいく最大の推進力はこのマインドをいかに育てるかに
あって、それがあって初めて研究が出来上がり、進んでいくと思います。次の
5か年計画のそのさらに先にというか、いまから人材育成してもその方たちが
一人前になるのは10年、15年先の話ですから、いまからこのような人材の育成
を考えていく必要があるのではないかと思っております。」

 臨床研究・治験を実施していく人材は、十分とは言えないまでも、数多く育
ってきました。これからは、臨床研究等のきっかけとなる問題を発見すること
に関する教育・研修にも力を注ぐ必要があると思います。また、この発見能力
は特定の人が持っていれば良いというものではなく、医療に関わる全ての人々
が基礎の能力として養わなければならないものだと思います。

 医療現場では、医師、看護師、薬剤師をはじめ、様々な職種の人が、毎日の
業務の改善に取り組んでいます。改善を目指すきっかけとなった問題の大きさ
で、現場の創意工夫で解決できるか、あるいは大規模な臨床研究を必要とする
かが決まるのでしょう。しかし、問題を見つけようとするマインドがなければ
その後はないと思います。

 「臨床研究・治験活性化5か年計画2012」に記載された事柄を実現化するた
めのアクションプランの構築がまもなく始まるようです。この計画を絵に描い
た餅に終わらせないためには実行すべきことがたくさんあると思いますが、そ
の先の問題についても考えることが大切だと思います。

「臨床研究・治験活性化5か年計画2012」は以下のURLに掲載されています。
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/chiken/dl/120403_3.pdf


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          副院長就任のご挨拶   
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                      副院長 多和 昭雄

 4月1日に副院長に就任しました多和昭雄です。1951年2月生まれのみずが
め座です。3歳まではJR立花駅の近くで育ち、それ以降は阪急宝塚南口駅を最
寄り駅に、有川 浩の小説「阪急電車」の舞台、阪急今津線沿線を利用して中
学・高校・大学と通学、青春時代を過ごしていました。1975年に阪大医学部を
卒業したあと小児科で研修、大阪厚生年金病院で3年間働いたあと1979年から
阪大小児科で小児血液腫瘍の診療をスタートしました。当院には1995年の阪神
淡路大震災の年の4月に国立大阪病院小児科医長として赴任し現在にいたって
います。30年以上小児血液腫瘍の臨床にかかわってきましたが、この間にやっ
たことを一つ紹介させていただきます。それは、小児造血器腫瘍の多施設共同
治療研究グループである関西を中心とした大阪小児白血病研究グループ(OCLSG)
の設立(1979年)、そしてOCLSGと名古屋大学、三重大学が中心となった東海グ
ループ、岡山大学、広島大学、札幌医科大学、北海道大学等が母体となった小
児白血病研究会(JACLS)の設立(1996年)、さらに2003年のJACLSと小児癌白血病
研究グループ(CCLSG)、九州山口小児がん研究グループ(KYCCSG)、東京小児が
ん研究グループ(TCCSG)からなるall Japanの共同研究組織である日本小児白血
病リンパ腫研究グループ(Japanese Pediatric Leukemia/Lymphoma Study 
Group, JPLSG)の設立です。これらの造血器腫瘍を対象とした多施設共同治療
研究によって日本における小児の急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血
病(AML)の治療成績が大きく改善したと自負しています。
 趣味についても一つ。TDR(Tokyo Disney Resort)の大ファンを自称していま
す。現役を引退したら舞浜に移り住んで年間パスポートを買って・・・と語り
だすときりがないのでこの話は別の機会とさせていただきます。話は変わって、
今後の副院長としての仕事ですが、医療安全部の仕事が大きな部分を占めると
考えています。幸い、優秀なスタッフに恵まれていますので、全員で力を合わ
せてがんばっていく所存です。話がアチコチいきましたが、この辺で。今後と
もよろしくお願いします。


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    地下鉄内での人命救助経験:ICLS役に立ちました。    
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                     感染症内科  大寺 博

 2011年4月より当院にお世話になっております感染症内科の大寺です。先日、
人命救助をする機会があり、以前に受けた二次救命処置(ICLS: Immediate 
Cardiac Life Support)講習が活かせたので報告したいと思います。
当院に赴任してきたこともあり2011年5月に災害医療棟で開かれたICLS講習に
参加しました。この時は、受講したことで自己満足していました。
 2011年12月朝8時頃の通勤途中で事件は起こりました。地下鉄「東梅田」駅
で電車を待っていると、線路を挟んだ向かいのホームでドンという鈍い音とと
もに男性がうつ伏せに倒れ、誰かが「駅員さん!」と大声で呼んでいました。
(「まずい!」)と同時に私は階段を駆け上がり最初に到着しました。(「す
ぐに救急処置をしなければ!」)その時ふと冷静になり講習を思い出しました。
まずは周囲の安全確認を・・・(「って安全に決まってるやろ!」)。「大丈
夫ですかー?」と意識状態を確認し、応答なし。駆けつけた駅員さんに救急車
の要請とAEDを指示。仰向けにして呼吸が無く頸動脈も触れない事を確認。す
ぐに心肺蘇生を開始。その後、AEDが到着し除細動を施行。心臓マッサージを
再開。徐々に呼吸や意識が改善しました。その後、救急病院に搬送され、後に
その人が無事なことを連絡受けました。
 今回、私は周囲の状況を見る余裕もなく、助けないといけないという一心で
自分自身があれこれ動いていました。よって、他の人へ役割分担など十分に指
示が出来ていない事。時間経過など記録出来ていなかった事。もっと冷静に対
応すべきであった、もっと何かスマートに出来たのではないか。など多くの反
省点はあります。また、講習会では心臓マッサージが出来ているのかを心電図
モニターを見て判断していましたが、実際では無く「しっかりと心臓マッサー
ジが出来ているのか?」と不安と葛藤していました。ただ、講習会で上手く出
来ていた事より「出来ているはず」と自分に言いきかせていました。部分部分
で思い出す事もあり、講習会が自信に繋がったと思います。その人が助かった
ことへの幸福感と充実感のなかで、本当に5月に講習を受けていて良かったと
実感しました。
 そうそうこのような機会は無いと思いますが、それだからこそ(出来れば定
期的に)講習会に参加しておくのは非常に重要に感じました。大阪市営地下鉄
全域において昨年度だけで約10人の方がAEDを使ったとのことでした。そう考
えるとあなたの身近にも起こる可能性が・・・。
 本当に助かって良かった。患者さんとっても、そして私自身にとっても。


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  診療科紹介 外科 4 呼吸器外科  
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                    外科 大宮 英泰

 今回は当大阪医療センター呼吸器外科をご紹介させていただきます。当院は
呼吸器外科専門医制度の基幹施設として認定されており、高見康二医長と当方
(大宮英泰)の2名の呼吸器外科専門医と1名の外科専修医で呼吸器外科診療を
担当しています。また国指定の地域がん診療連携拠点病院ということもあり、
胸部悪性疾患、特に肺癌を中心に診療を進めています。2011年の手術件数は95
例で、うち肺癌39例、転移性肺腫瘍19例、縦隔腫瘍14例、気胸・気腫性嚢胞性
疾患12例と、胸部悪性疾患が多くを占めていました。
 ところで、CTの発達・普及により小型肺癌の発見される機会が増えています。
末梢小型肺癌は気管支鏡下生検等での手術前診断が困難ですが、当院では末梢
小型肺癌読影の権威である栗山啓子放射線診断科科長のハイレベルな画像診断
のもと、区域切除・部分切除といった縮小手術を行い術後肺機能温存に努めて
います。また縮小手術の適応とならない早期肺癌に対しては完全鏡視下肺葉切
除を適用しており、縦隔疾患や良性疾患に対しても積極的に胸腔鏡手術を施行
しています。胸部悪性疾患に対する胸腔鏡手術の適応については施設間で十分
に標準化されていないのが現状ですので、当然のことながら安全性と根治性の
双方を重視した適応決定を心がけています。
 一方、未だ多くの肺癌患者が進行した段階で発見されているのが現状ですが、
進行癌症例であっても、化学療法や放射線療法との併用である集学的治療や、
拡大手術で治癒が期待される場合には、関係各科と連携のうえ可及的に手術を
施行しています。また当科では手術のみならず、気管支鏡検査等、肺悪性疾患
を主とした診断業務も担当していますので、胸部異常陰影等でお困りの際はご
相談いただければ幸いです。
 以上、当科の診療内容につき簡単にご紹介させていただきました。私自身は
2007年の当院赴任までは胸部外科あるいは呼吸器外科といった枠組みで活動し
ていたため、当院の如く消化器外科や乳腺外科とから成る、いわゆる大外科の
中の呼吸器外科という位置づけには当初いささかの戸惑いを感じました。しか
し当初の懸念とは裏腹に、外科他領域のみならず各診療科間においても、規模
の大きな総合病院にありがちな垣根の高さを感じることはありませんでした。
このため拡大手術や術前並存疾患の対応等におけるコラボレーションも円滑で、
良い環境で仕事をさせてもらっていると常々感じる次第です。


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 大阪医療センターボランティア 平成24年度活動へのお誘い
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                    ボランティアコーディネーター
                    藤本 和彰

 私たちのボランティアは平成9年(1997年)1月に導入され、今年で16年目を
迎えました。また導入の遥か以前(昭和46年6月)から小児科病棟で関西私塾
教育連盟の先生方による社会奉仕として、病児の学習指導が行われていました。
その活動は今も「愛の病院学級」として継承されています。
導入後「法円坂」「患者情報室」「園芸」を初めとする多くのボランティアグ
ループに参加していただきました。いまも9グループ、100人を超えるボランテ
ィアの方々に活動していただいています。
各ボランティアグループの名称と主な活動内容は、下記のとおりです。
1.「法円坂」:初診・再診手続きの補助、外来・入院患者さんへの院内案内、
   車椅子移送介助、リネン類の縫製及び補修、玄関用車椅子・台車の維持
   整理、通訳(英語・中国語等言語、手話)
2.「患者情報室・リボンズハウス」:図書・体験談・インターネット等での
   医療情報提供
3.「園芸」:院内外の環境緑化、合い言葉は“花と緑いっぱいの病院を”
4.「音楽」:年3回、コンサートの開催
5.「綿の花 絵本の会」「絵本サークル ぶくぶく」:絵本読み、パネルシア
   ター、エプロンシアター、人形劇、紙芝居、ペープサート、貸し出し文
   庫
6.「栄養管理室」:栄養事務補助
7.「生花」:玄関フラワースペースの飾り付け
8.「愛の病院学級」:小児科病棟での習字指導(平成24年4月現在休会中)

と、多種多様の活動が、多くのボランティアの皆さまのご協力により、継承さ
れています。
 ※詳しくは大阪医療センターボランティアホームページをご覧ください。
・ボランティアホームページアドレス→http://www.onh.go.jp/volunteer/

 平成23年度の大阪医療センターボランティアグループ全体の活動状況は、活
動延べ人数:1226人、活動延べ日数:2438日、活動延べ時間:8397時間でした。
当院のボランティア活動をサポートする組織には、「ボランティア運営委員会」
と「ボランティア支援室」の2本の柱があります。また、日々の諸問題がタイ
ムリーに処理できるようにと、ボランティア支援室の中に「支援室連絡会」が
設けられています。これらの組織によりボランティア・患者さん・病院との3
人4脚での活動が円滑に運営されています。
 ボランティアの方のさりげない表情や、やさしいまなざし、言葉かけが、心
に不安を抱きながら病院を訪れる、患者さんやご家族の気持ちを和らげ、心地
よく受診していただくための癒しの時間になっています。
時には、患者さんの対応に苦慮することもありますが、患者さんやご家族、職
員の方々から掛けていただく、「ありがとう」「助かりました」「ごくろうさ
ま」などの温かい言葉に、元気をいただいています。今日も、明日も、明後日
も「この私たちを待っていてくださる人たちがいる」ことが嬉しいのです。
また、ボランティア自身が活動をとおして社会の一員として、人間的に成長で
きることを願っています。近未来の超高齢化社会を人間らしく生きるために、
ボランティア活動に参加することで得るものはとても多く、また、大切なこと
と考えています。
 ボランティアさんを見て、患者さんが自分も元気になったら参加したいとか、
ご家族の方からも時間ができれば、なにかお手伝いしたいなどの言葉を聞くこ
とがあります。そんな時、ボランティア活動をしていること意外に大きな付加
価値となっていることにとても有難く感謝しています。
現在100人を超えるボランティアさんが活動していますが、10年、15年と続け
ているうちに、当初に比べて体力が弱くなっている方もあるように思います。
健康に十分留意しながら活動していただきますようお願いいたします。
 平成24年度も、新しいメンバーを迎えながら、歩み続けられるよう頑張って
行きます。ボランティア活動をしてみたい、「なにかお手伝いしたい」「何か
私にも出来ることがあるのでは」と思っていらっしゃる方は、どうぞお問い合
わせください。また、外来診療棟1階 ボランティア室に、ボランティア・コー
ディネーターがいますので、是非、お尋ねください。
私たちと一緒に活動してみませんか。お待ちしています。

 大阪医療センターでは病院ボランティアを募集しています。
病院で自ら進んで労力、時間、技術などを提供して、患者さんにやさしさとう
るおいを提供すると共に、活動を通じてボランティア自身の成長にもつながる
活動です。資格は特に要りません。自分自身が健康であり、やさしさと何事に
も積極的に取り組む気持ちがあれば活動できます。
また、活動方法は、個々のライフスタイルに応じて決めていただいています。
服装は活動しやすい服装で構いませんが、エプロン・胸章など用意しています。
「一緒に活動してみませんか!」ボランティアを希望されます方、お待ちして
います。
管理課ボランティア担当までご連絡ください。

・管理課ボランティア担当    TEL:06−6942−1331(代表)
・ボランティアホームページ→ http://www.onh.go.jp/volunteer/


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      看 護 の こ こ ろ 
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                       ICU 高橋 雪子 

 4月に入り、各地から桜の便りが届く季節になりました。今年も真新しい白
衣に身を包み、緊張した面持ちの新人看護師さんがICUにもやってこられまし
た。その隣で昨年の新人ナースが生き生きと仕事をしている姿を見ると、1年
で大きく成長したんだなーとほほえましく、また一年頑張ろうと背筋が伸びる
思いです。
 私も看護師になり、今年で14年になりました。その間、救命救急センターと
ICUで勤務してきました。どちらも疾患によって意識障害があったり治療のた
めに鎮静したりして意思疎通を図ることの出来ない患者さんが多い病棟です。
「患者さんからの反応がないからやりがいを感じにくいのではないか」と聞か
れることもあります。しかし私は、救命センターやICUでの看護もその他の病
棟と同様に常に患者さんとのコミュニケーションの上に成立っていると思って
います。今回はそのことを改めて感じた出来事についてお伝えします。
Aさんはバイクの単独事故で頭部に外傷を負い、緊急手術を受けられました。
くも膜下出血の他、脳挫傷とびまん性の軸索損傷があり、人工呼吸器管理下に
頭蓋内圧管理治療が行われました。軸索損傷のため意識障害が遷延し意思の疎
通は困難でしたが自発呼吸も安定したため、入院3週間後に気管挿管が抜去さ
れました。抜管後、酸素マスク使用により体内の酸素濃度は適正に保たれてい
ました。その夜、私達が夜勤に就くとしばらくしてAさんはマスクをはずそう
としたり、ベッドから降りようとしたりする動作が目立つようになり、安全確
保のために両上肢と体幹の抑制が開始されました。しかしその後も不穏様の動
作が続きました。受持ちのスタッフからAさんの危険防止策について相談をう
け、ベッドサイドを訪室し、何かがおかしいと感じました。呼吸のリズムが乱
れ、息を吸おうとすると鼻孔が大きく広がっています。SpO2は何とか90パーセ
ント台を保っていましたが呼吸音を聴取すると僅かに気道狭窄音を認めました。
医師に報告し、胸部X-Pを確認すると片肺に広範な無気肺を認めました。抜管
により排痰が不十分になった結果、高位の気管で痰による閉塞が起こっていた
のです。
再度気管挿管が実施され、体位を調整しながら気管内吸引を行いました。その
後のレントゲンで無気排は改善が認められ、Aさんは再挿管時の鎮静が切れた
後も暴れることなく静かに休まれていました。翌日、Aさんの家族へ去痰のた
めの気管切開の必要性が説明され、2日後には気管切開が実施されました。頭
部外傷後の患者さんはその経過の中で、せん妄状態から危険行動を認めること
が多く、そのような興奮状態の時には呼吸のリズムも乱れているものだという
私達の慣れと思い込みによってAさんの変化に気づくのが遅れました。その間A
さんは呼吸苦のためにベッドの上でいてもたってもいられなかったのです。そ
れを思うと本当にAさんに申し訳ない思いでいっぱいでした。勤務が終わった
後、受持ちのスタッフと共に「Aさん、しんどかったね、なかなか気づけなく
てすいません。」と心から詫びました。
 この出来事のあと、私は看護学生時代に出会ったルース・ジョンストンの
「聞いてください 看護婦さん」という詩を改めて読み返しました。学生時代
にこの詩に出会ってから、私の中には常にこの詩が有りました。
私達が看護する対象である患者さんの中には言葉で思いを伝えられない患者さ
んが大勢おられます。だからこそ、私達はそばに行き、その顔を見て、呼吸音
や心音を聴き、手で触れた感触を確かめて彼らの声なき声を聞く努力を常に怠
っていけないと思います。また、その声を聞ける喜びと責任を後輩に伝えてい
ければと思っています。


「聞いてください 看護婦さん」
                         ルース・ジョンストン

ひもじくても、わたしは、自分で食事ができません。
あなたは、手の届かぬ床頭台の上に、わたしのお盆を置いたまま、去りました。
そのうえ、看護のカンファレンスで、わたしの栄養不足を議論したのです。

のどがからからで困っていました。
でも、あなたは忘れていました。
付き添いさんに頼んで、水差しを満たしておくことを。
あとで、あなたは記録につけました。わたしが流動物を拒んでいますと。

わたしは、さびしくて、こわいのです。
でも、あなたは、わたしをひとりぼっちにして、去りました。
わたしが、協力的で、まったくなにも尋ねないものだから。

わたしは、お金に困っていました。
あなたの心のなかで、わたしは厄介ものになりました。

わたしは、一件の看護的問題だったのです。
あなたが議論したのは、わたしの病気の理論的根拠です。
そして、わたしをみようとさえなさらずに。

わたしは、死にそうだと思われていました。
わたしの耳がきこえないと思って、あなたはしゃべりました。
今晩のデートの前に美容院を予約したので、勤務の間に、死んでほしくはない、
と。

あなたは、教育があり、りっぱに話し、純白のぴんとした白衣をまとって、ほ
んとうにきちんとしています。
わたしが話すと、聞いてくださるようですが、耳を傾けてはいないのです。

助けてください。
わたしにおきていることを、心配してください。
わたしは、疲れきって、さびしくて、ほんとうにこわいのです。

話しかけてください。
手をさしのべて、わたしの手をとってください。
わたしにおきていることを、あなたにも、大事な問題にしてください。

どうか、きいてください、看護婦さん。

(American Journal of Nursing 1971年2月号より)

ホームページ→http://www.onh.go.jp/kango/kokuritu.html


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          研 修 医 日 記
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                     研修医 福田 泰也

 もう3月も半ばになり初期研修も後2週間で修了という時期にさしかかってい
る。同期がどんな研修医日記を書いてきたのかを見返してみると本当に様々な
視点からこの2年間を振り返っており、何かかぶらない内容はないかと考えて
いたが、もうこの病院の特徴についてはさんざん書かれているので思いつかな
い。あえてこの病院についてではなく、初期研修医として僕が二年間で大切だ
と感じたこと(つまり正しいかは不明で僕の主観のみ)を徒然なるままに書い
てみようと思う。

1.上司の先生、他科の先生とのプライベートの付き合いを大切にすること。
 初期研修が終われば飲む機会も減ってしまうことを懸念して今は仕事が終わ
ってから飲みに行くことが多い。誰と飲みに行くかというと自分の後輩や同期
と飲みに行くこともあるが、上司の先生、それも若手の先生から医長クラスの
先生まで、そして様々な病院の先生方と幅広くお酒の場をご一緒させていただ
く。自分がその先生の話を聞かせていただきたいと思えば自分からその先生を
お誘いする。ここで初期研修医(だけでなく医師)として非常に大事なことの
一つが耳学問だと思っている(専門家の話はエビデンスレベル5ですが(笑))
。他の施設ではどのような手技を行っているのか、他の科の先生はどのような
考え方をしているのか、昔はどんな治療をしていたのか、こんな失敗をしたな
どなど、話はつきない。机の上の勉強より頭に入るし、お酒の場であれば少し
失礼なことを聞いても許容していただける(気になっているだけかもしれない)
。自分の病院だけに閉じこもってしまうのではなく、色々な病院の先生と交流
を持つことも非常に大事だと思う。

2.よく考えること、そしてoverestimateすること、そして自分の意見をもつこ
と。
 僕ら初期研修医は医師の免許をとってから1,2年しか経験していない卵の殻
を割って少し頭を出したヒヨコちゃん達である。1年しか仕事をしていないの
に1年も立つとなぜか一人で仕事ができるかごとく錯覚に陥る。これはどの研
修医にもいえることだろう。自分もそのうちの一人であるし、後輩をみている
とそんな気がするし先輩にそう思われていただろう。僕らにもっとも足りない
ことは経験である。これは症例の数であり、失敗の数でもある。もちろんそれ
をカバーするために日々勉強するわけだがよく考えることが重要だと思う。経
験の数が少ないということは検査前確率の何が高くて何が低いかが判断できな
いことである。上司の先生は優しいのですぐ答えを教えていただける。先々と
事が進んでしまう。でもそれに頼ってばかりで追いかけているだけでは力は伸
びないと思う。自分で考えて、そしてoverestimateすることで失敗を重ね、よ
り近道な判断、トリアージができるようになるのではないかと思う。時には例
え大先輩の先生であっても真っ向からぶつかるのも必要ではないかと思う。そ
れを嫌がる先生は、少なくともこの病院にはいないと思う(発言の仕方には気
をつけてください)。

 その他にも感じたことはたくさんありますが、「誰目線で書いてんねん」と
の突っ込みを受けたのでこのあたりで失礼致します。自分の特性を生かして頑
張ってください。大阪医療センターはいい病院です。

臨床研修のホームページ→http://www.onh.go.jp/kensyu/index.html


**********************************************************************
総編集長:病院長 楠岡英雄
編 集 長:副院長 恵谷秀紀、多和昭雄
     看護部長 渡津千代子 
編   集:百崎実花
発  行:独立行政法人 国立病院機構 大阪医療センター院長室
         (〒540-0006 大阪市中央区法円坂2-1-14)
**********************************************************************
 大阪医療センターにも多くの新入職員が入ってきました。
職場に慣れて、医療チームメンバーとして活躍が期待されます。
では 来月まで

http://m-maga.onh.go.jp
メールマガジンのご感想をお聞かせ下さい。
www-adm@onh.go.jp 

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