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メールマガジン「法円坂」No.152(2014/1/15)(独立行政法人 国立病院機構 大阪医療センター)



 新年明けましておめでとうございます。
 アメリカは大寒波とのことですが、大阪の年末年始は比較的温暖な気候に恵まれ
ました。今年初めてのメルマガをお届けします。
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   メールマガジン「法円坂」No.152(2014/1/15)
          (独立行政法人 国立病院機構 大阪医療センター)
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今月号の目次
 ・院 長 楠岡 英雄 です
 ・診療科紹介 脳神経外科(1)
 ・「第37回“愛の夢”クリスマスコンサート」開催する
 ・看 護 の こ こ ろ
  ・研 修 医 日 記
 
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         院 長 楠岡 英雄 で す 
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 あけましておめでとうございます。

 今年の三が日、大阪は穏やかなお天気でした。皆さまも良いお正月を迎えられた
ことと思います。

 さて、今年は午年ですが、十干十二支では「甲午(きのえうま、こうご)」の年
です。ものの本によりますと、「甲」の字は、「草木の芽が殻を破って頭を出した
形」であり、「旧体制が破れて革新が始まる」意味を持つそうです。しかし、「旧
体制の殻を破って、革新の歩を進めなければならないのであるが、そこにはいろい
ろな抵抗や妨害があるために、その困難と闘う努力をしながら、慎重に伸びていか
ねばならない」年だそうです。

 一方、「午」には、「つきあたる」、「さからう」という意味であり、植物の生
育が止まり、衰退の兆しを見せている状態だそうです。十二支の後半に入る年であ
り、午前と午後のように、後半の六年は前半と違った状況下に置かれることになる
ようです。

 「甲午」は60年周期の干支が後半に入る年であり、前半30年と違う世の中になる
はじめの年のようです。「革新的」とか「進む」という積極的な意味にもなります
し、「新たなはじまりの機運は生じているものの、旧来の抵抗勢力に会い、芽生え
が途切れてしまう年」とも言われます。いずれにせよ、「甲午」の年は、異色だが、
将来を決める、極めて重要な年と想像されています。

 昨年の「癸巳」は、「物事が行き詰り、極限に近づく」年であり、一方、「より
しっかりと物事の本質を見極め、規範を定め、筋道を立てて新たなチャレンジをす
る必要」のある年とされていましたが、今年がそれに続く年であってほしいと思い
ます。

 さて、当院のことを申しますと、昨年正月のメルマガにも記しましたが、最大の
課題は病院の更新築です。幸い、昨年11月に病院の更新築が決定し、現在、設計事
務所の選定作業が行われています。4月からは基本設計・詳細設計に入り、順調に
進めば、平成30年4月には新病院での診療開始の予定です。この計画を確たるもの
にすべく、職員一丸となって、経営改善などを進めていきたいと思います。

 また、臨床研究センターは本年2月末に竣工し、3月から引っ越しが始まります。
新しく、より広くなった環境で、エイズ診療や再生医療に関わる臨床研究を推進し
ていきたいと思います。

 最後になりましたが、皆さま方の今年一年の健康と発展を祈念しますとともに、
本年も引き続き、当院への倍旧のご厚情をお願い申し上げます。


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       診療科紹介 脳神経外科(1)
       脳腫瘍の診療について(前半)
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                    脳神経外科 科長 
                    中島 伸

 当院では埜中正博脳神経外科医長、金村米博再生医療研究室長、沖田典子脳神経
外科医師らが脳腫瘍を担当しています。今回のメルマガでは当院における脳腫瘍の
診療について述べたいと思います。

 まず基本的知識として知っておくべきは、脳腫瘍には良性と悪性があることです。
良性脳腫瘍としては髄膜腫、聴神経鞘腫、下垂体腺腫などがあり、多くの場合は摘
出手術のみで治療が終了します。これに対し、悪性脳腫瘍の種類は神経膠腫、悪性
リンパ腫、転移性脳腫瘍などで、手術に加えて、化学療法や放射線治療などが必要
になります。
 脳が他の臓器と違っているところは、悪性腫瘍を周辺の正常脳組織ごととってし
まうと機能障害を起こすことです。したがって、手術においては、腫瘍部分は可及
的に切除する一方で正常脳は可及的に温存しなくてはなりません。相対立する2つ
の困難な目標を両立させることが脳神経外科医の使命だといっても過言ではありま
せん。この目標を達成するために当院では手術ナビゲーターやフェンスポスト、5-
ALA(アラベル)などを導入しています。
 手術ナビゲーターは、術野では肉眼で識別しにくい脳腫瘍を術前MR画像と照合し
て切除範囲を決めるものです。自動車のナビゲーターを思い浮かべていただくとイ
メージしやすいのですが、自分が操作している部分が術前に撮影したMR画像におい
てどこにあたるかがリアルタイムにナビゲーター画面に表示されます。この技術に
より、以前より遥かに正確な切除ができるようになりました。
 ところがナビゲーターを使った手術中に腫瘍の摘出をすすめるにしたがって脳が
変形していき、術前のMR画像とのズレが生じる不具合があることが分かってきまし
た。それを克服するために、当院では腫瘍摘出を開始する直前に柔軟なチューブ
(フェンスポスト)を腫瘍縁に沿って打ち込んでいます。こうすると腫瘍摘出によ
って脳が変形してもチューブが追随して変形し、常に腫瘍縁を示し続けるので、よ
り正確な切除を行うことができるようになります。
 さらに、アラベルという薬を手術直前に患者さんに投与しておくと、手術中に半
導体レーザーで術野を照らすことによって腫瘍部分だけを光らせることができます。
この新技術は昨年から当院に導入され、より徹底的な腫瘍切除が可能になりました。
 次回は脳腫瘍の化学療法と、当院ならではの先端的な診療について紹介いたしま
す。


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     「第37回“愛の夢”クリスマスコンサート」開催する
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                    ボランティアコーディネーター
                    藤本 和彰

 昨年12月10日、当院・講堂にて、第37回“愛の夢”クリスマスコンサートを開催
しました。会場の講堂には、大小2体のクリスマスツリーが、ボランティア「法円
坂」の皆さんにより、とても綺麗に飾り付けられました。そしてコンサートを楽し
みにされている患者さん・家族で一杯に!“皆さまこんばんは〜・・・”いつも進
行のお手伝いをして下さっている、八田 叔子さんの挨拶でコンサートが始まりま
した。

 最初の奏者は、ピアノ演奏の佐竹 史子さん。“愛の夢“コンサートは、ディズ
ニー映画「ピノキオ」の主題歌、「♪星に願いを」での幕開けです。続いて「♪エ
ーデルワイス」「♪慕情」、映画音楽2曲を聴かせて頂きました。映画をご覧にな
った方は、それぞれに場面を思い浮かべながら、懐かしく聴いて頂けたのではない
でしょうか。
そして最後はオリジナル曲「♪冬景色」。この曲は佐竹さんが東北旅行に行かれた
とき、「雪がしんしんと降っていて、その美しい雪山の景色を音楽にしました」と
お伺いしています。皆さまも東北の美しい雪山の景色と、雪がしんしんと降る感じ
を味わいながら聴いて頂けたことと思います。
いつも素敵な音楽を届けて頂き、ありがとうございます。

 続いては邦楽、筝と十七弦による「筝曲」です。奏者は生田流正派大師範・酒井
 典彦さんと、十七弦はお弟子さんの谷 実己雄さんです。
プログラムは、
♪1.「♪筝独奏のためのさくら」
♪2.ふるさとの四季(小学唱歌メドレー)
♪ふるさと〜♪春が来た〜♪春の小川〜♪おぼろ月夜〜♪茶摘み〜♪夏は来ぬ〜
♪虫の声〜♪紅葉〜♪旅愁〜♪雪〜♪冬景色〜♪ふるさと
♪3.二つのクラッシック・・・「♪楽興の時」「♪エリーゼのために」
♪4.クリスマスメドレー
♪サンタが町にやってくる〜♪ジングルベル〜♪きよしこの夜(聖夜)

 皆さまは、筝と十七弦の違いをご存知でしょうか? 「筝」は、弦が13弦の「こ
と」をいい、その音楽を「筝曲(そうきょく)」と言います。元々「こと」という
のはひら仮名で弦楽器の総称です。源氏物語では、筝は「そうのこと」、琴は「き
んのこと」、そして琵琶を「びわのこと」と弦楽器は全て「こと」とひら仮名の表
現でなっています。
また、十七弦は低音用の楽器で普通の弦楽器で言えば、筝がヴァイオリンとしたら、
チェロに当たるような音域を使っています。ですから糸も太いし、名前の通り17本
の弦を使っています。
 先ず、「筝独奏のためのさくら」そして「ふるさとの四季(小学唱歌メドレー)」
を、酒井 典彦さんによる「筝」の独奏で聴かせて頂きました。「♪さくらさくら」
は通常日本古謡といわれていますが、元々は「筝」の練習曲だそうです。ですから
筝で弾くのはとてもた易いのだそうです。
昔懐かしき小学唱歌メドレーでは、会場から歌ったり、口ずさむ声が流れ、舞台と
の一体感を感じ取ることができ、何かとても幸せで、たいへん心地良い時間でした。
 続いて「筝」と、谷 実己雄さんの「十七弦」との息の合った合唱を聴かせて頂
きました。筝で聴く、二つのクラッシックとクリスマスメドレー。違和感がなく、
不思議と溶け込むことができ、とても想い出深いクリスマスコンサートになりまし
た。会場も見事な弦さばきに、静寂のなか皆さま聴き入っておられました。「心の
琴線にふれる」という言葉がありますが、筝の奏でる清らかでとっても美しい音色
に心を和ませていただきました。「筝独奏のためのさくら」は素晴らしく、一足早
い春の訪れを感じさせるような爽やかな気分にさせてくれました。

 今回のクリスマスコンサートでは、ピアノと箏の調べをお楽しみいただきました。
ご来場いただきました皆さまには、ゆったりとしたひと時をお過ごし頂けたのでは
ないでしょうか。
ボランティア皆さんからの「心の贈り物“愛の夢”クリスマスコンサート」、会場
一杯のお客さまに聴いて頂きました。そして色々な方々に支えて頂きながら無事終
えることができ、とても幸せを感じています。皆さまに感謝いたします。
“時間が許されればもっと聴きたかった”のは、私だけ(?)だったのでしょうか。
 次回のコンサートをどうぞお楽しみに!

 今回参加して下さった10代〜50代・60代以上の男女65名の方々から、「コンサー
ト感想アンケート」を届けて頂きました。「全体的にいかがでしたか?」の設問で
は、61名(94%)の方から「よい」の評価も頂いています。
皆様から頂きました貴重なご意見・ご感想は、今後コンサートの企画の参考にさせ
て頂きます。ご協力有難うございました。

◆メールマガジンをご愛読の皆さま、大阪医療センターでは病院ボランティアを募
集しています。お電話か、ボランティアホームペー


ジからお申し込みください。
「入院中に行われた“愛の夢コンサート”に参加して、とても感動しました。元気
を一杯もらって、無事退院できることになりました。出来ますれば私もぜひ、演奏
できる機会をいただきたいと願っています」とお申し出をいただくことがあります。
もちろん、すぐに音楽ボランティアの登録をしていただくことがあります。
現在110余名のボランティアの方々が活動されています。一緒に活動してみません
か。ボランティアを希望されます方、お待ちしています。
管理課ボランティア担当までご連絡ください。 

・電話番号→06−6294−1331(代表) 
・ボランティアホームページ→http://www.onh.go.jp/volunteer/
・患者情報室ホームページ →http://www.onh.go.jp/jouho/jyohousitu.html


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      看 護 の こ こ ろ        
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                  臨床研究推進室 辻本 有希恵

 新年を迎え、心機一転頑張ろうと思われている方も多いのではないでしょうか。
今年は午年です。「馬には乗ってみよ、人には添うてみよ」ということわざがあり
ますが、私も今年はさらに人との出会いを大切にし、経験のないことにもチャレン
ジしていきステップアップできるよう飛躍の年にしたいと思います。

 私は看護師になり9年目です。整形外科病棟で勤務した後、臨床研究推進室に異
動し臨床研究コーディネーター(以下CRC)として治験に参加される患者さんの支
援を行っています。昨年4月には副看護師長に昇任し、11月には認定CRCの資格を取
得することができ、毎日忙しいながらも充実した日々を過ごしております。この度、
看護のこころを書く機会をいただきましたので、私がCRCを志すきっかけとなった
エピソードについてお話したいと思います。

 病棟勤務をしていた頃、抗がん剤の治験に参加されるAさんが入院されました。A
さんは様々な抗がん剤治療や手術を受けられましたが、病状の進行を抑えられず、
治験を期待して他院から来られました。治験薬を投与した後、倦怠感や嘔吐、食欲
不振が強く出現し、骨髄抑制による発熱もあり身体的苦痛を伴いました。思うよう
に改善しないこと、入院生活が長くなることにストレスを感じられていました。
Aさんを担当したある日のことでした。「治験続けるか悩んでるねん。今までの治
療よりだいぶしんどいし、またやって副作用が出て回復しなかったらしんどいだけ
や。入院ばっかりやったら何のためにやってるかわからへん。それやったら、治験
を止めようと思う。自分の死に際は考えなあかん。自分やったら治験するか?『決
めるのは自分や』って言われるんやけど、何が良いんか決められへん。治験して自
分に少しでも効果があって、他の同じような病気の人にも使えるようになったら良
いな〜とも思う。治験しかもう手立てもないし。自分がやることで新しい薬ができ
て、これからの人の役に立てたら良いやろ?今まで自分がやってきた抗がん剤も今
までの人達のおかげであるわけやからな。でもしんどいねん。」と時間をかけて思
いや考えを表出してくださいました。
その当時の私は治験についての知識がほとんどなく、話されることをただ聞くこと
しかできませんでした。Aさんの気持ちを考えていなかったわけではないですが、
こんなに悩み様々な思いを抱えられていたことを受け止めていなかったと思いまし
た。治験について知識がなく、何も伝えられない自分にもどかしさを感じました。
身体的な症状緩和だけではなく、どのような思いで治験に参加することを決められ、
継続されているのか精神面に寄り添った看護をすること、自己決定ができる情報を
提供することや時間や環境を調整することが大事だと思いました。
 Aさんとの出会いで、医薬品が承認・販売されるまでに治験という段階があるこ
と、疾病をもつ患者さんも自由意思で参加されることを初めて知りました。患者さ
んや自分たち看護師も関わり、新しい医薬品ができていくことは素直にすごいこと
だと感じ、治験に参加される患者さんの支援をしたいと思うようになりました。患
者さんは様々な思いを持ち、たくさん悩んで治験に参加することを決めておられま
す。その気持ちに寄り添いながら支援していくことを大事にしたいと思っています。
治験は患者さんが治療を行っていく中での一部分でしかありません。これからも患
者さんが何に重きをおいて生活をされているのかを考えながら、自己決定できるよ
う正しい情報を提供し、その人らしく治療を続けていけるよう支援していきたいと
思います。


ホームページ→http://www.onh.go.jp/kango/kokuritu.html


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          研 修 医 日 記
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                 研修医2年目 松村 雄一朗

 国立大阪医療センターのホームページをご覧のみなさま、こんにちは。研修医2
年目の松村雄一朗と申します。このホームページをご覧の方は、学生さんもいらっ
しゃれば、医師、研修医、看護師やこれから受診を考えている患者さんまで様々と
思います。今回の私の研修医日記がみなさまにとって国立大阪医療センターを知っ
ていただく端緒となれば幸いです。

 国立大阪医療センターについて、みなさんの印象はいかがでしょう?建物が大き
くて、広くて、たくさん科があってなどなど…とかく、病院は何か不気味な印象を
持たれがちで、建物が大きいのでそういった印象はよけいに助長されているかもし
れません。以前、東京都庁が新宿に新しく竣工されたときに、都庁は東京都が危機
に陥った時に「巨大ロボ」に変身するという都市伝説があったほどですから、大阪
医療センターも無機質な機械のように映っているかもしれません。
たしかに病院は、人工心肺やMRIなど近代的な機械が立ち並び不気味な場所に見え
るかもしれません。しかし、それらの近代的な機器は絵画で例えると遠くにかすん
だ背景にすぎず、主人公はあくまで患者さんや医療関係者など「人」だと思います。
少々長くなりますが、紹介までに大阪医療センターでの研修と、がん診療の臨床現
場を感じていただけるエピソードをご紹介させていただきます。

 Aさんは、ビールの大好きな患者さんでした。私がAさんとお会いしたのは、総合
診療部という科を回っている夏の暑い日でした。見るからに痩せられて、車いすに
乗って初診外来の診療室に入ってこられました。歩けないうえ、ここ1週間まった
く食事が喉を通らなく、2か月で体重が5kgほど減っているとのことでした。入院し
ていただき、いろいろな検査の結果、肺がんと判明し、呼吸器内科で抗がん剤治療
をうけることになりました。私も1か月Aさんを担当しましたが研修医のローテーシ
ョンで別の科に移ったので、Aさんの担当からは外れました。そして、その年の冬、
内科のローテーションでAさんと再会しました。呼吸器内科で抗がん剤と放射線治
療のために入院されていたのでした。私は、自ら担当になることを志願して、Aさ
んの入院担当となりました。抗がん剤の治療といっても、医師だけでできるわけで
はありません。国立大阪医療センターでは、病棟の看護師さんを初め、痛みや吐き
気など副作用を専門的に取ってくれる緩和ケアチーム、抗がん剤に詳しい薬剤師さ
ん、そして食事量が落ちてきたら食べれるように食事の内容を工夫してくれる栄養
士さん、いろいろな手続きをお手伝いしてくれるソーシャルワーカーさん、そして
腫瘍を総合的専門的に治療する腫瘍内科の先生などなど。がん治療ではたくさんの
「人」がつながって、Aさんのような患者さんを、親身にサポートしていきます。
前述のとおり、Aさんはお酒が好きで、入院中もビールが飲めたらとおっしゃって
いました。なんでもビールの大瓶を一晩で10本近く飲んでいたこともあるそうです。
私は入院生活が長いAさんを何とかしたいと考えて、ノンアルコールビールの許可
を病棟と主治医にもらいました。ノンアルコールビールといっても、アルコールは
入っていませんから、麦茶に炭酸をいれたものに近いのですが、Aさんは食後の楽
しみといっていろいろな銘柄の「ビール」を試しておられました。私も同じように
買ってきて家で飲んで、どこの銘柄のノンアルコールビールが一番ビールに似てい
るかという議論をよく二人で交わしました。あるとき、ドイツのノンアルコールビ
ールをインターネットで発見しました。どうやら、酒税の関係で日本ではノンアル
コールビールは麦のエキスに炭酸を入れて作るようですが、海外では、ビールを作
ってからアルコールを抜くという製法が可能なようで、ビールに本当に味が似てい
るとのことでした。私は、早速購入しAさんにもこっそりおすそ分けをしました。
残念ながら病棟で乾杯するわけにはいかなかったので、感想をお聞きするだけでし
たが本当においしかったと言ってくださいました。大阪医療センターでは内科のロ
ーテーションは3か月。私は再びAさんの担当から外れ、再会を誓ってまた別の科へ
移動しました。Aさんの命はあとだいたい1年くらいでした。私は、翌年の秋に選択
科目として内科を回る予定だったので、その時まで生きていて欲しいと願っていま
した。そして年が明けて、春・夏が過ぎ、秋も深まった時、再びAさんの担当にな
ることになりました。担当になった初日に病室を訪れました。Aさんはがんの転移
が進み、全身状態も悪く、酸素マスクをつけてベッドに横たわっておられました。
Aさんはマスク越しに「ここのところいろいろ入院生活で不自由があったけど、先
生が帰ってきてくれたので、またわがままが言えるから、うれしい」と話してくれ
ました。そして、Aさんは、私が再び担当した翌日にお亡くなりになられました。
私が担当医として戻ってくるのを待っていたかのようでした。Aさんを病院からお
見送りする前に、奥様から「先生にもらったノンアルコールビールが本当に美味し
かったと喜んでいました」とお言葉をかけていただきました。私も1年前の話だっ
たのですっかり忘れていましたが、Aさんとビール談義に華を咲かせていた状況が
懐かしく鮮明に脳裏に浮かびました。ある先生がおっしゃっていた「がん治療の究
極はオンコロジーではなく、ヒューマニティーだ」という言葉が身に沁みた瞬間で
した。

 国立大阪医療センターは、見た目で大きな体で無機質に映るかもしれませんが、
中身は温かい心をもった「巨大ロボ」です。興味を持たれたみなさん、よかったら
一度お越しください。

(注)現在、ノンアルコールビールを含めて、入院中は原則として禁止されていま
す。

臨床研修のホームページ→http://www.onh.go.jp/kensyu/index.html


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総編集長:病院長 楠岡英雄
編 集 長:副院長 恵谷秀紀、多和昭雄
     副院長・看護部長 渡津千代子 
編   集:百崎実花
発  行:独立行政法人 国立病院機構 大阪医療センター院長室
         (〒540-0006 大阪市中央区法円坂2-1-14)
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 これから、インフルエンザ、感染性胃腸炎の季節です。手洗いをしっかりおこな
って、かからないようにしましょう。
 では、来月まで。


http://m-maga.onh.go.jp
メールマガジンのご感想をお聞かせ下さい。
www-adm@onh.go.jp 

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